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感想ブログ~演芸(落語・浪曲・講談)etc.~

『スラヴ叙事詩』/『廓噺の会』

2017年5月22日

 


①「ミュシャ展」@国立新美術館

 

『スラヴ叙事詩』は画家アルフォンス・ミュシャ
が1910年~1928年の約18年をかけて描いた、
構想・大きさ共に広大な、壁画か天井画に比され
る連作である。


この20作品は、現在プラハ国立美術館
ヴェレトゥルジュニー宮殿に展示されている。
国外で全作品が展示されるのは、実に初めて
のことである。


ミュシャの遺族は国宝とも言うべきこの作品群を、
すべて国外に持ち出すなどとんでもないと、裁判
まで起こしたが、幸いなことに、展示される運び
となった。


遺族の心情は分からなくもない。
一方で、国立新美術館の『スラヴ叙事詩』展示に
かける情熱も度し難い。
移送時(どの会社が請け負ったのだろう)を含め、
かなりスリリングなドキュメンタリー番組を作れ
そうである。


土・日や祭日は殺人的な混雑が予想されるため、
平日の午後遅い時間に行ったがそれでも甘かった。
入場券を買うだけで約40分待ち。しかし、入場制
限まではなく安堵した。(因みにもう一つの展示
草間彌生展」も盛況だった)


ミュシャと言えば、19世紀末、アール・ヌーヴォー
の画家としての側面が有名である。今回の展示にも
ミュシャアール・ヌーヴォー」という展示室が
あり、有名な19世紀末パリの女優サラ・ベルナール
のポスター等が展示されていた。
それ故、「ポスター画家」と揶揄されることもある。



すべて「堺市」が所蔵している。何故だろう、と思い
調べたら、堺市立文化館内に、「アルフォンス・ミュ
シャ館」があり、けっこうな数のコレクションがある
ようだ。初めて知りました。



因みに、20年以上前に活躍していたチェコ出身のプロ
テニス・プレイヤーのイワン・レンドルもミュシャ
品のコレクターだったと記憶している。


『スラヴ叙事詩』の展示室に入る。息を呑む。
「自意識」が消し飛ぶ。
これはミュシャが文字通り全身全霊をもって
描きあげた、ナショナリズムノスタルジア
が相俟った、他に類を見ない傑作である。


幾つかの作品を観てから後ろを振り返る、と、
複数の小宇宙が間近に浮かんでいるように見
える。その感動は、言語化不可能である。


⑮、⑰~⑳の作品が展示されている部屋は、
何故か「撮影可能エリア」となっていた。
意図がいまいちよく分からない。
美術展と言えどもエンタテインメントであ
る、とか商魂由来のサービス精神?
こんな素晴らしい作品は、人口に膾炙すべ
きである、ということだろうか。
いずれにせよ、スマホで撮影しようと、お
構いなしに他の客にぶつかってくる無神経
な輩には閉口した。


そしてミュージアム・ショップは大混雑。
芸術作品のグッズ化、はあまり好ましい
と思えない。アール・ヌーヴォーの作品
はその作品性から言えば妥当性があるが。
このポストカードを端緒とする「グッズ化」、
いつから始まったのだろう。



入場券購入でしくじってしまったため、
あまり長居できなかった。少し未練を
残しつつ、ギロッポンを後にし、黄色
い銀座線で浅草へ。






立川談春廓噺の会」@浅草公会堂

 


立川こはる『元犬』
立川談春『錦の袈裟』
立川雲水『天災』
~仲入り~
立川談春『二階ぞめき』

 


居残り佐平次』ツアー以来、暫く東京近郊
では談春師の生高座を拝聴出来ないだろうと
思っていたが、うれしくも有難い、如何にも
常連客が好みそうな内容の独演会が、三日連
続で行われた。浅草は遠く、しかも平日。
東京の西の田舎住みには、18:30開演は辛い。
しかし、欲望には勝てなかった。


六本木から浅草までは、30分程度。間に合わ
ないかもしれない。しかし浅草駅に降り立つ
と、何とか間に合いそうな気配。


浅草公会堂は初めて行く場所だが、浅草駅か
ら5分程度のはず。地図を見ていたら、人力車
の車夫さんが親切にも行き方を教えてくれた。
有難い。途中、「雷門」のでか提灯の前で、
豆腐に胡麻を散らかしたような顔の母親と娘
母子がじゃれあって、盛大にぶつかってきた。
「危ないでしょうがっ」と言うと、眉を顰めて
「ああ?」と言うのみ。
時間があったらやらかしていたかもしれない
(胸ぐら摑むとか)。



席は前から2列目。近い。
まず常連客が当然のごとく抱く、「あの前座の
お姉ちゃんはどうしたのだろう」という疑問に、
元気に応えるこはるさん。
「奉公に出されました!」そ、そうですか。


『元犬』は小柄なこはるさんに合っているよう
な気がする。7年前と比べて、本当に上手くなっ
て・・・と感慨深い想いでいると、最後の下げで、
んん・・・?訝しく思いながらも拍手。


そして談春師ご登場、「もう弟子はとりません。
地方まで荷物持ちをしてくれるひとを募集して
います」。一体何があったんだろうか。
そしてやはり下げを間違えていたこはるさん。
こっちの胃が痛くなる。


『錦の袈裟』、談春師では初めて拝聴した。
最近よくかけておられるようだけれども、
何故だろう。「与太郎と結婚した聡明なお
かみさん」という設定が不思議な噺である。
与太郎は、究極的には聡明かもしれないが、
あくまでも与太郎でしかない。
やや下品な噺だが、耐え切れずに笑ってし
まう(いや耐える必要はないのだが)。



『二階ぞめき』。談志の十八番。こちらも初
めて拝聴、若旦那がひとりで喧嘩を始める場
面がやはり素晴らしい。



初日に三日分の番組表を頂いたので、以下に記しておく。

23日/立川こはる『一目あがり』
     立川談春『五人廻し』
     ~仲入り~
     立川雲水『動物園』
     立川談春『文違い』

24日/立川こはる『錦明竹』
     立川談春『付き馬』
     ~仲入り~
     立川雲水『堪忍袋』
     立川談春木乃伊とり』



廓噺」と聞いて、個人的には『包丁』
木乃伊とり』(後者は拝聴したことあり)がいいな、
と思っていたが、『錦の袈裟』『二階ぞめき』は
談春師の生高座では初めて拝聴したので、大満足
である。欲を言えば、『五人廻し』を志らく師の
それと聴き比べてみたかった。



苦節七年、未だに『包丁』を拝聴できていない。
これはもう、「恋慕」である。いや、「渇望」か。
今年こそ拝聴できるだろうか?