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感想ブログ~演芸(落語・浪曲・講談)etc.~

玉川太福・宝井梅湯二人会

2022年2月12日(土)


玉川太福・宝井梅湯二人会」(第十二回)
 @らくごカフェ


宝井梅湯『ねぎま(葱鮪)』

玉川太福・玉川 鈴
男はつらいよ第17作
 「寅次郎夕焼け小焼け』

~仲入り~

太福・鈴『天保六花撰
       「河内山と直侍」』

梅湯『関東七人男「沢潟屋強請」』



太福さんと梅湯さんの二人会。
最近は前読みなし。
チラシの惹句「たっぷり浪曲、がっつり講談」
そのままに、大変聴き応えがあり楽しく収穫が
多い会だと思うのだが…


梅湯さんの一席目『ねぎま(葱鮪)』は演題から
してユニークで、落語の『目黒のさんま』に似
ていると思ったが落語にも同様の噺があり、
ねぎまの殿様』というらしい。講談の方が元
のようだ。
煮えたぎった葱を食べて喉に芯が飛び出す「ねぎ
鉄砲」の描写や、主役の殿様雲州松江の松平「不
昧公」が偶然名が体を表す状態なのが実に面白い。
梅湯さんの高座はいつも読み物自体がとても面白
い。


太福さんの一席目は鈴さんとペアルック(古語)の
様相。藍(紺青)色で眼に浸透するような落ち着い
た色だ。鈴さんの着物の方が高価とのこと。
男はつらいよ」シリーズの名作「寅次郎夕焼け
小焼け」。何度聴いても胸に沁み入る。
太福さんが演じる女性は、男性が女性を演じる際
によくあるわざとらしさの類があまり感じられな
い。何故だろう?といつも思う。


仲入り挟んで太福さんの二席目は「河内山と直侍」。
ゴルフが苦手なのと同じ理由で歌舞伎が苦手なので、
歌舞伎(芝居)がらみのクスグリを入れられると理解で
きず申し訳ないと思うが、たとえ分かったとしても
心得たとばかりに笑うのはスノッブじみていやだし、
まさにそれが歌舞伎が苦手な理由であるところの、
「まあ、このクスグリは歌舞伎を知らないあんたら
には分からんだろうがね」という伝統芸能エリート
意識が透けて見えたら辟易してしまう。
玉川系統の「河内山」は疣膿だらけの尻で高い座布
団に座りやがって、という場面が妙に強調されてい
るし、太福さんの場合さらに自意識過剰にならざる
を得ないクスグリが加わるので聴いていて辛くなっ
てくる。あくまでも極個人的な面倒臭い理由で苦手
な演目だ。とは言え歌舞伎文化を全否定する意図は
なく、『中村仲蔵』は大変好きな演目である。


梅湯さんの二席目は連続講談「関東七人男」の一話
沢潟屋強請」。梅湯さんは連続講談を多数持って
おられ、この会ではそのうちの一席を読まれること
が多いようだ。
先般から懸念の、東 武蔵『明石の夜嵐』は歌舞伎の
『伊勢音頭恋寝刃』がネタ元だが該当する場面がな
く、題材が同じ連続講談『古市十人斬』との関係は
どうなのかが未だ判然としないので、是非『古市十
人斬』全編、特に「明石の夜嵐」の段を聴いてみた
い。浪曲『明石の夜嵐』とはまったく違う話とのこ
とだが、となると浪曲は完全に東 武蔵の創作なのだ
ろうか。


この二人会でいつか浪曲、講談それぞれの『明石の
夜嵐』を拝聴できたら、という願いは悲しいかな夢
か妄想に過ぎないだろう。