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感想ブログ~演芸(落語・浪曲・講談)etc.~

第四十七回玉川太福”月例”木馬亭独演会

2022年2月11日(金祝)


第四十七回玉川太福”月例”木馬亭独演会
 @浅草木馬亭


玉川太福・玉川みね子
『明石の夜嵐』

玉川太福・玉川 鈴
『サウナ探訪#1』

~仲入り~

太福・みね子
陸奥間違い』

 

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”月例”木馬亭独演会は慣例だと月初めの週末開催が
主だが、今月は11日祝日の夜という稀日。
前読みもゲストもなしの三席。ファン冥利に尽きる。

一席目『明石の夜嵐』。
ネタおろし後三度目だが、今まで太福さんの節では
聴いたことがない高い調子や三味線の手の部分があ
るので、紛う方無き古典だけれども新作を聴くよう
な耳覚ましさがある。

東 武蔵の音源は独特の語り口が面白いし、合い三味
線の東 登美男が素晴らしい。
その音源では東 武蔵自身が「『伊勢音頭恋寝刃』の
抜き読み、『明石の夜嵐』全編(前編ではないと思う)
はまず、これに留むる次第なり」と言っているが、
講談の『古市十人斬』とはまったく無関係で、すべて
東 武蔵の創作なのだろうか。けっこう残酷な場面があ
るし、妖刀村正、青江下阪が出てくる(副題「たたる妖
刀」)ので刀剣ファンにも刺さりそうだ(刀だけに)。


二席目『サウナ探訪#1』。
ソーゾーシー新春ツアーでネタおろしされた新作浪曲
昨年12月の木馬亭独演会でネタおろしした身辺雑記浪
曲『付け根攻め』を発展させたものであるということを、
風の便りで聞いていた。
だとすれば申し訳ないが私は多分笑えない。胸の中で不
穏な風が吹き、嵐となり気持ちが小さな舟のごとく翻弄
され始めた。

ツアーの某所ではウケなかったとのこと。実際にその場に
いなかったしその土地の落語好きの傾向は分からないが、
某一門の師匠方が好きなことと、太福さんの浪曲を理解で
きないのはまったく別の話だ。

演題から自明だが、設定はかの渡辺篤史が案内人のTV番組
「建物探訪」。おお?フィクションに昇華した結果不穏な
部分が消えている!
やはりお婆さんが出て来て志村けん師匠の「ひとみ婆さん」
に似ているが…
最後のオチに当たる部分でベタだが思わず「ぶはっ!」と
吹いてしまった。何だろうこの敗北感は?完全敗北。
その上節と三味線の伴奏まで付いている。何なのだろうこ
の愉し過ぎる人は。#2に期待までしている自分に驚く。


三席目『陸奥間違い』。
何故この演目?と思ったが、何度聴いても愉しいし、
カン違いの節はいつ聴いても素晴らしい。
二代目木村忠衛の陶然ものの節の終わりに、お客が
「よっ!ただえ!」と掛け声をかけるように、いつ
か私も「よっ!だいふく!」(「ふくたろう!」かも
しれないが)と声を掛けられる日が来るだろうか。