2022年2月20日(日)
「第12回高円寺演芸まつり
座・高円寺寄席 講談、浪曲たっぷり!」
@座・高円寺2
神田伊織『五条の橋』
玉川太福・玉川みね子
『男はつらいよ第20作「寅次郎頑張れ!」』
田辺銀冶『夢二 黒船屋』
~仲入り~
一龍齋貞寿『鎌倉星月夜』
毎年恒例の高円寺演芸まつり。
講談と浪曲のみの会があるのが特徴的である。
今年は若手の講談師、浪曲師の会も新設され
たようだが、残念ながら伺えなかった。
話芸を聴くにあたり顕著なのは、まず芸に発
展しているからこその「音」「調子」「トー
ン」の心地よさである。
多分に体調の良しあしが関わってくるが、
睡眠不足だったり疲れていたりすると、
聴き惚れるような声で、
整ったリズムで、
語られたり唸られたり奏でられると、
全神経が鎮められてしまう。
まるで枯渇した心の泉になみなみと水が湛え
られるがごとく。
「浪曲は大人の子守歌」とはよく云ったも
のである。
張扇で釈台を叩くパアン、という音、三味線
の超絶技巧な音に咎められて現実に引き戻さ
れる。話の筋が分からなくなるのでそれで構
わない。でも心地よさを手放したくない、と
いう思いが拮抗する。
睡眠不足は人類の敵だ(申し訳ございません)。
太福さんは何をかけられるのだろう、と期待
していた。最近寄席でもかけている「寅次郎
頑張れ!」の15分ぐらいのバージョンと仰る。
おや、持ち時間が寄席と同じくらいなのは寂
しい(高円寺「寄席」ではあるが)。
しかし好きなミュージシャンのライブでヒッ
ト曲を聴くように、節や登場人物の台詞が分
かってくるのは楽しい。博やワット君、幸子
が出ると「待ってました!」とばかりに客席
から拍手が起こる(勿論自分もする)。
銀冶先生は生高座自体を初めて拝聴する。
生粋の艶やかさ、華やかさと良い意味のした
たかさを感じる。
演目は竹久夢二が主人公の自作新作講談。
自分の野暮天ぶりが恥ずかしくなった。
貞寿先生の『鎌倉星月夜』は初めて拝聴。
一見現代もののような演題だが、鎌倉時代の
悲恋物語だ。
貞寿先生は声そのものに説得力がある。
トリの奈々福師匠の「掛川宿」も初聴きだ。
国友 忠伝の甚五郎ものは軽快な展開で、
浪曲のスタンダード・ナンバーの趣き。
国友 忠の相三味線をつとめられていた豊子師匠
の三味線の音は、歴史の重さを感じさせつつも、
常に瑞々しい。
渋谷らくご的に通常は滅多に観られない顔付け
と番組で、得難い会だった。
来年も期待したい。