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感想ブログ~演芸(落語・浪曲・講談)etc.~

大江戸悪人物語 episode 6

2018年5月21日
「大江戸悪人物語 season2017-18
           episode6」
 @日本橋社会教育会館






橘家かな文『のめる』
神田松之丞『慶安太平記 「鐡誠道人」』
~仲入り~
蜃気楼龍玉『真景累ヶ淵





どうしても松之丞さんの「鐡誠道人」を
拝聴したくなり、この機を逃したらいつ
になるか分からないと考え、合法かつ持
ちつ持たれつな方法で、幸運にもチケッ
トを入手することができた。



鐡誠道人の経帷子よろしく白い着物を着、
空間を妖刀のごとき眼光でねめまわし、
張り扇で切り裂く。その「白」は赤い血
を、紅蓮の焔を想像させるための「白」
である。



鐡誠道人を囃したてる見物客の喧騒、
観音開きの木棺を開ける時の金属的な音、
場面そのものを追い立てるような、痛み
さえ感じられるような、釈台をひっ叩く
張り扇の破裂音、音、音、音、音…
洪水のごとく「音が来る」ということに、
恐怖を覚えたのは初めてだ。



何故まだ二ッ目の講談師に、そのような
空間を現出させることが可能であるのか。
それは彼が「善悪の彼岸」に立ったこと
があるからだ。
人間の実存の危険領域、絶壁から深淵を
覗いたことがあるのだ。恐らく。多分。



一方龍玉師はほとんど暴力的なまでの静
寂を湛えて在り。

夜露にしとどに濡れた菖蒲か水仙の鋭い
葉のごとく、艶め
かしくありつつも眼光
は尖鋭的である。



ほとんど極限までに追い詰められた、講
談師と言うよりは
格闘家が醸し出すかの
ような「激動」と、冷静に言葉を辿る

沈静」。両極端な高座、堪能させて頂き
ました。









ひとつ気になったこと。
斜め前の席の、推定60代前半と思われる男性が、
松之丞さんの口演の途中ぐらいから船を漕ぎだ
したのだが、仲入り後は周囲を振り向かせるよ
うな鼾まで掻き始めた。


人間誰しも周囲を暗くされると、必然的に眠気
に襲われる習性をもっているようで。
平日夜の公演、日中労働していたのであれば、
尚更。私自身不眠症で悩んでいたときに、口演
中に眠ってしまったこともある。


隣席の女性が、椅子を揺り動かしたりなんかし
て、その男性の覚醒を試みたが、駄目だった。
仲入り後は終始時々鼾をかきながら寝ていた。


この男性、次回のチケットをもう入手済みのよ
うだったが、一体何をしに来ているのだろうか。
完売で当日券もなし。で諦めた人たちに悪いと
は思わないのか?猛省するべし。