Impression>Critique

感想ブログ~演芸(落語・浪曲・講談)etc.~

今年最後の立川志らく独演会2017

2017年12月23日
「今年最後の立川志らく独演会」
 @よみうりホール




立川志らく『疝気の虫』『やかん』
~仲入り~
     『文七元結

 



談志を引き継いだ形で始まった年末独演会、
第七回目。そして今年は談志の七回忌である。
私は皆勤で、すっかり年末の風物詩となって
しまった。



今年志らく師はTVのヴァラエティ番組に多数
出演し、「ひるおび」という番組のコメンテ
イターをつとめた結果、良くも悪くも「ブレ
イク」されたようだ。
しかし私は落語家さんとしての志らく師にしか、
興味がない。



『疝気の虫』。懐かしくも面白い。
『やかん』。鉄板で面白い。
談志直系のイリュージョン落語全開。



そして『文七元結』。
「愛憎関係」にある、とでも言いたくなるような
不思議な関係にある兄弟子さんの方は、毎年末大
フェスティバルホールで独演会を開くようになっ
ているが、今年は、何と『文七元結』と『芝浜』の
大ネタを両方かける、という暴挙に出た。



しかし、一件乱暴に見える上その対象は不明だが、
紛う方無き「挑戦」であることは確かだ(流石「博徒」)。


何年か前、初めてその『文七元結』を実体験したとき、
あまりに素晴らしかったので、終演後も席から立てず
に終った。どこがどう素晴らしかったか、などと言葉
で説明するだけ不粋である。



ひとつ言えるのは、客(受け手)の想像力を牽引する力
が強力である、ということだ。


一方、こちらの『文七元結』は、「文七元結~男はつ
らいよバージョン」とのことで、番組表(パンフレット)
にそれぞれの登場人物に当てたキャストが書かれている。
いいんじゃない、それはそれで「あり」、という人もい
るだろうが、個人的にその方法はあまりしっくり来なかっ
た。


その方法は客の想像力を限定してしまう。然程『男はつら
いよ』に興味を持っていなければ、ただ普通に『文七元結
としてしか聴きようがない。



聴き終えて席を立ちたくなくなるような余韻を残す高座
と、「ただ普通に」聴き終える高座。
濃密だが大仰で湿度が高い牡丹雪のような「文
七」より、
江戸前でさらっと
した粉雪のような「文七」の方が良い、
という人もいるだろう。



あくまでも好みの問題だが、私はどうしても前者に惹か
れてしまう。