Impression>Critique

感想ブログ~演芸(落語・浪曲・講談)etc.~

今年最後の立川志らく独演会2016

2016年12月23日
「リビング落語会 第6回
 2016年今年最後の立川志らく独演会」

 @よみうりホール

 



立川がじら『時そば
立川志らく『芝浜 後日の噺(『親子酒』)』
     『芝浜 以前の噺(『天狗裁き』)』
~仲入り~
     『芝浜』

 



師匠談志の年末独演会を引き継いだ形で始まった、
よみうりホールでの志らく師年末独演会。
その6回目である。
因みに私は皆勤です。



何回かは必ず『芝浜』をかけておられたが、ここ数年
は試行錯誤か迷走か、かけずに終った。そして今回は
ひねりのきいた趣向で、志らく師お得意の「後(前)日談」
と相成った。



元々私は『芝浜』という演目自体は然程好きではない。
「御話」としての構造が単純だし、やや説教じみている
からだ。ただし、談志は別格で、談志がこの『芝浜』と
いう演目自体の「意味」を書き換えた、と言っても過言
ではない。



無論、ベートーヴェン「第九」を聴くみたいに、年末の
風物詩として、「今年も押し迫って来たな。ひとつ『芝浜』
でも聴こうかね」というひとがいてもそれはそれで粋だとは思う。



そもそも『芝浜』に関して理屈っぽいことを並べ立てる方が
「変人」なのかもしれない。さらには、喬太郎師のように、
夫婦を男同志(夫夫)に変えてしまう、という離れ業をやって
のける落語家さんも存在するし。
その『芝カマ』(何度も言うようだがこのタイトルは頂けない)
は未聴なので、是非拝聴したいのだが、その高座に出会える確
率は、極めて少ない。



さて志らく師は、元々人情噺を得意とする落語家さんではない
(と個人的には思っている)ので、談志の『芝浜』の後継者とし
てはどうなんだろう、と思わなくもない。
「後日・前日談」て言ったって『親子酒』と『天狗裁き』ですし。
それはもう、その二席は滅法面白いです。抱腹絶倒です。
しかしながら、「酒」「夢」つながりで、無理矢理こじつけ、的
な印象を払拭できませんでした。



そして『芝浜』。志らく師の『芝浜』のおかみさんは、精神的に
幼くて、それは何やら志らく師の女性の好みを反映しているよう
で、いささかうんざりしてしまうのだが、今回は少し精神的に成
長しているように見えた。それもまた、志らく師の私生活を反映
しているのかもしれない。



志らく師の「黄昏のライバル」であるところの談春師は、28日に、
1000人以上のキャパシティの大阪フェスティバルホールで『芝浜』
をかけ、90分の大熱演であったらしい。
「後継者」ではなく、談志を凌駕する、という意志での『芝浜』
であるのなら、是非拝聴してみたい。