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感想ブログ~演芸(落語・浪曲・講談)etc.~

「太福萬福」⑩

2017年9月16日
「太福萬福」⑩
 @神保町らくごカフェ

 


玉川太福(曲師:
玉川みね子)
清水次郎長伝 石松代参』
坂本頼光無声映画『血煙荒神山
    『国定忠治』解説」
~仲入り~
頼光×太福「トーク
玉川太福(曲師玉川みね子)
国定忠治 山形屋乗り込み』



「裏を返す」べく、伺った。台風が日本列島を
縦断しつつあり、雨模様で気圧は低く、湿気で
ずぶずぶである。


神保町には、古書関係と「岩波ホール」に
映画を観に来るのが習い。
噂の「らくごカフェ」、初参である。
有名カレー店「ボンディ」が入っているビル
の中にあり、やや入り難い雰囲気。


高座(舞台)がコンパクト過ぎて、屏風・「見台」・
浪曲師・曲師(パイプ椅子)が並ぶと、窮屈そうである。
それにしてもあの華美な「テーブル掛け」。
太福さんに拠れば、本当にこれが正式名称なのだそう
だが、明治の初年から既に確立していたのだろうか。
恐らく太福さんに限らず、色々な方がこの件について
調べておられるとは思うが、明確な資料があるのだろ
うか。


浪曲師が登壇する時に鳴らされる拍子木(専門用語で
「栃」きがしら、と言うらしい)。素晴らしく耳に心
地が良い。浪曲も「啖呵」の部分で落語のような
「上下(かみしも)」がある。
客席と高座(舞台)が近いので、大迫力。


昨今の、戦前までを初現とする大衆芸能ブーム。
発端は不明だが、その理由のひとつとして、
演者が比較的若い、ということが挙げられる。
この会の御二人も30代である。


トーク」で頼光さんに戦前の映画ポスターを
見せて頂いた。頼光さんは、プライヴェート
も相当な無声映画マニアのようだが、御自分の
仕事用に、無声映画のフィルムをオークション
で競って落として購入することがあるとのこと。



そう、(物質)文化の守護者は、ともすれば「コレ
クター」であったりするのである。


浪曲とスタンダードなロックには、容易に親和性
が見て取れ、既に故国本武春が実演しているが、
太福さんの浪曲には、プレ・モダンでありながら
プログレッシヴなロック性を感じる。
そう感じる所以として、曲師の存在が大きいのは
明らかである。


しかし、そんな小理屈は正直どうでもいい。
太福さんは啖呵を切る様子が素敵に格好良い。
文字通り痺れて陶然としてしまう。
こんなに着物が似合うひとも珍しい。



(古典)大衆芸能ブームのなか、淘汰されてしまう
分野・ひともあるだろうが、太福さんは、浪曲
未来へ繋いでいく才能を持した方だと思う。