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感想ブログ~演芸(落語・浪曲・講談)etc.~

立川談春独演会@日本青年館

2017年9月7日
日本青年館ホールオープニング記念公演
           立川談春 独演会」
 @日本青年館ホール



立川談春かぼちゃ屋』『三年目』
~仲入り~
    『文七元結

 


夏休みの1日を充当。そうでないと、都心での平日の
18:30開演は、東京の田舎勤め・住まいには難しい。


新設の日本青年館ホールは、神宮球場や青山・國学院
高校に囲まれて建つ。周囲では大手ゼネコンがオリン
ピック関連施設を建築中だが、開場まで少しだけ間が
あったので、周囲を散策してみる。フェンスに囲まれ
た敷地内、やはり発掘調査は行われたのだろうか(職業
病)。


入場して誰でもすぐに気がつくことは、入口(出口)がと
ても狭い、ということ。災害時のことをまったく考慮し
ていない、としか思えない。
座席は割と考えて作られているようだったので、大変残
念である。


前座なし、の三席。


かぼちゃ屋』。5年前くらいに聴いて以来だろうか、
与太郎の所作のディテールが細かくなったような。



『三年目』。談春師では初めて拝聴した(はず)。
亡くなって幽霊になって出てくる予定のおかみさんが、
妙に作為的(「ぶって」いるよう)に感じられた。



文七元結』。初めて拝聴した時は、終演後、
座席から立ち上がりたくないくらいに感動した
ものだが。
始まりから変えてきており(自身のおかみさんか
ら着物を奪って着る場面からではなく、いきな
り佐野槌の女将と対峙する場面から始まる)、
「おおっ」と心の中で身を乗り出した。


あれだけ精神的苦痛をなめ、周囲に迷惑をかけてなお、
十両をぽい、と文七に与えてしまう長兵衛。
「江戸っ子気質」というだけでは根拠に乏しい理不尽
さをどう納得させる(御自身を含め)のか。


と、文七に激昂しつつ「生命の重さ」を説く長兵衛。
感情的に、ある意味力づくで納得する(させる)おつもりか?
そして談春師、涙?
感極まってしまったのか、それとも私的に何かあったのだ
ろうか。



或いは、先代勘三郎丈の『文七元結』を想起した、
とか...
いずれにせよ、意外だったので動揺してしまった。


マクラでちょっと永六輔の真似をして、客席から拍手が起
こったら、「そんな大して似てないでしょ。甘やかさない
で!」と半ば本気で怒ってしまう。その素の「照れ」が、
「一度やったものは、もらうわけにはいかねえ。返しても
らった、とか言いふらさないでくんな」という、長兵衛の
江戸っ子気質の強がりに、説得力を生む。



季節はずれの「文七」の言い訳的に、「オープニング記念
公演で、『包丁』ったってねえ」と仰るが、やはり落語に
季節感は重要である。
季節はずれの演目をかけて違和感がない、ということは、
逆を言えば、それだけ客の想像力を牽引する力量がある、
ということの証左であるかもしれないが。


そして私はいつになったらその『包丁』(別名『えびっちゃ
ま』)を拝聴できるのだろうか。

もし近々余命いくばくもない、という状況になったら、
強盗となり押しかけて、聴かせてもらおうか?その時
の凶器は横町の魚屋から借りてきたそれではなく、
発掘した錆刀(あかいわし)が良かろうか?


冗談ですから。C' est  une  blague.


30周年記念として、CDを出して頂きたい、と、
恐らく私だけではなく、多くのファンが思って
いるはず。
2枚(四席)しかないので、マクラを覚えてしまい、
正直食傷気味なのです。
演目は『居残り佐平次』『夢金』を希望。