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感想ブログ~演芸(落語・浪曲・講談)etc.~

第4回立川シネマシティ寄席(浪曲)

2017年7月18日
「第4回立川シネマシティ寄席 ことたま」
 @立川シネマシティ・ONE・kstudio

 


玉川太福・玉川みね子『銭湯激戦区』

柳家三三『元犬』

太福・みね子『中村仲蔵

 


前回の講談に続き、今回は浪曲
こちらも生で拝聴するのは初めてである。
広沢虎造や、最近では残念ながら若くして
お亡くなりになった国本武春さん等、浪曲
師の名前を聞いたことがある程度。
まるで初めてロックライヴに赴く高校生の
ような青い期待を抱きながら伺った。
おまけにゲストが三三師である。

浪曲は明治時代初期を画期とする近代芸能で、
「唸る・語る」演者「浪曲師」と、三味線で伴
奏する「曲師」の二人で演じられる。
太福さんは若くして二代目玉川福太郎の弟子に
なったが、入門して3ヶ月弱で事故で師匠を失っ
たそうだ。曲師のみね子さんは、二代目福太郎
の奥様、一門のおかみさんである。

『銭湯激戦区』。その日、太福さんがお住まい
という、荒川区を含む東京の北東一帯(豊島区が
最もひどかったらしい)で大粒の雹が降り、大変
だったという。そんな(どんなだ)荒川区は日本で
一番銭湯の件数が多いらしい。
その事実を浪曲にした、太福さん自作の新作浪曲

吃驚しました。浪曲がこんなに格好いい話芸だっ
たとは!
太福さんは勿論、曲師のみね子さんも素晴らしく
格好良い。と言うか、曲師がいなければ成立しな
い芸能である、と得心した。

正直ゲストが三三師であることに惹かれたのは確
かで、演目は予想通りな感じで『元犬』だったの
だが、サゲがいつもと違っていた。
小回りが利く三三師でも気の毒に思えるくらい狭
い高座だったが、これくらいのキャパの会場(175
席)で、至近距離で三三師の高座を拝聴できるなん
て、こんな幸福なことはない。

中村仲蔵』。まさか浪曲でこの演目を聴けるとは。
太福さんが拍子木(←柝き、というらしい)の音と共
に登壇する前、椅子に座って三味線を爪弾くみね子
さん。ロバート・フリップ翁がチューニングする姿
を彷彿とさせる(プログレ好き限定比喩
)。

そして太福さん、泣ける程格好良かった!
某落語家さんの高座に負けず劣らず、と言ってしま
いたい程。あのグルーヴは、名状しがたい高揚感を
惹起する。声と節で心身を太鼓のように鳴らされた
ような感覚。
お姿も背が高く”舞台映え”の権化のようながっしり
とした体躯で、まだ青年の年代だと思われるが着物
がとても似合っている。
美丈夫、という古の言葉が浮かぶ。

ロック好きでまだ浪曲を生で聴いたことがない人に、
是非ともお勧めしたい。
これからも、機会があれば是非拝聴したい、と思わ
せられた。
帰りの電車でひとり秘かに高揚・興奮していた。
まるで頭の中で尺玉花火が連発しているようだった。