Impression>Critique

感想ブログ~演芸(落語・浪曲・講談)etc.~

『百年目の会』

2015年5月13日
『百年目の会』「立川談春三十周年記念落語会」
 @宮地楽器ホール(旧小金井市民交流センター)

 


立川談春『野ざらし』(『談春半生記』)
~仲入り~
    『百年目』



前座なし。談春師は後継者(弟子)を育てることを諦めたようだ。
「一人でやってます」。
その気持ちは忖度できる。勤め人が新人教育をするだけでも
難儀なのだから、ましてや堅気ではない芸人の方においてをや。
いややはりその「人」のタイプに拠るのだろうか。
「芸人」と「教育者」を両立させている人も多数存在する。
してみると、やや自暴自棄ぎみの出囃子は誰が奏していた
のだろう。
録音ではなく生の様に聴こえたが、こはるさん…ではないだろ
うし。


『野ざらし』、最高でした。狂気じみて「サイサイ節」を唄う
八五郎、たまりませんでした。
談春半生記』が( )付きなのは、『百年目』が長いから、と
いう理由で殆ど端折られてしまったからです。



『百年目』。滑稽噺でも人情噺でもない、教訓噺、だろうか。
素人考えでも演じるのが難しいと思わせられる。3月に逝去
した、三代目桂米朝が十八番としていた。



『百年目』は、「ここで会ったが百年目・・・」のあの「百
年目」のこと。珍しく談春師がプログラムに「演目『百年目』
について」という説明文を書かれている。



しかし…疲れからか、1/3ぐらい、夢の中におりました。
けっこう前の方の席だったので、船漕いでいたのが目立った
のか、最後に「今日は暑かったし、空調が涼しくて眠くなっ
ちゃいましたよね」と談春師が仰ったときは、肝が冷えた。
他にも同じ状態の人が複数いたのかもしれませんが。
本当に申し訳ありませんでした。全部しっかり拝聴したかっ
たです。



未だ放映日が未定という、談春師の傑作エセ―が原作のドラ
マ『赤めだか』。談春師役を演じた方(超有名アイドル)のファ
ンが、「いったいどうゆーことをやるひとなの?」といった
態で何人か観に来ていたみたいです。
因みに師匠談志役は北野武。晩年ならまだしも、少々御歳を
召しているような気がしますが…



『百年目』のマクラで、「こんなのが来るんですよ」と言っ
て、おもむろに手紙を取り出し、読み始めたその内容は、
確かに呆れるようなものでした。いつの世にも「勘違い野
郎(女)」というものは存在するとしても、落語がそんなに
好きでもないのに落語家になりたい、ついては御返事を頂
きたい、と言ってのける神経。すごいです。



しかしその「傾向」はどんな分野にも表れているように思
われます。小説読まないのに小説家になりたい、etc...
ただ、「男の方には分かると思いますが、面接に来てこん
なこと言う奴どうです?」というのはいただけない。
人事部(課)に女がいない、とか、どの明治時代の話なので
しょうか。



あくまでも個人的な見解ですが、この日の談春師は、
「フンッ」て鼻で笑ったり、客をバカ扱いしたり、
いつにも増して意地悪な感じがしました。
そもそも東京の僻地で平日、開演18:30というのは酷
でしょう。



御自分で「東京の人(ここも一応東京都だが?)がこの
時間にここまで来るには、半休取らなきゃいけない。
そこまでして来てくれるかどうか」って仰っておられ
たけれど、何で客(の愛ってやつですか)を試すのか。
いえ「そういうところ」も含めて落語家・談春師に惹
かれているのは確かです。
仰る通り、「バカな客」なんです。



言わずと知れた故杉浦日向子の漫画『百日紅』がアニメ
映画化され、談春師は声優として出演されているとのこと。
これは是非観に行きたい。


また、8月に「三十周年記念落語会『もとのその一』FINAL
東京公演が、Bunkamuraシアターコクーンで行われる。
予定演目は『たがや』『小猿七之助』『居残り佐平次』。
またしてもチケットが買えないのは明白である。
私は一体いつになったら談春師の生「居残り」を聴けるの
だろうか…