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感想ブログ~演芸(落語・浪曲・講談)etc.~

マグリット展

2015年5月24日
マグリット展」@国立新美術館

 


国立新美術館、実に初めて行きました。
同じ六本木にある美術館でも「ズーヒル」のスノッブ
がするギャラリーよりは居心地が良い。国立なのは伊達
じゃない。
ただ、時間を見誤って入館可能時間ギリギリだったので、
慌ただし過ぎた。自業自得だが。
それ故人は疎らだったので、作品を観るのは容易だった。




ルネ・マグリットの大規模な単独の展覧会は、何年かごと
に催されている。
帰って本棚に図録を置こうとしたら、既に2冊あったので、
今回で合計3になった。




一番古いのは22年前、1994年11月~1995年1月、
今は無き新宿三越美術館で催されたもの。
展示作品数125点。
図録の内容は3冊中最も充実している。




次が13年前、2002年7月~8月、Bunkamuraザ・ミュージ
アムで催されたもの。展示作品数は93点。
そして今回の展示作品数は131点で、最も多い。



マグリットの作品は、タイトルと切り離せない。
フーコー『言葉と物』を持ち出すまでもない。
作品とタイトルの「幸福な乖離」、「言葉」と
「もの」の相克。



個人的に最も好きな作品は『深淵の花』Les fleurs
l' abîme(1928)。頻出するモティーフの一、銀色の
鈴が花として暗い画面に描かれ、不気味な鈴蘭の
ようだ。
今回の図録の作品解説に拠れば、マグリットはこの作品に
ついて、以下のような言葉を残しているという。

 

  「最も日常的な物に悲鳴を上げさせたいという私の意図
  のもと、それらは新しい順序で並べられ、心を掻き乱す
  ような重要さを持たなければなりませんでした。[中略]
  私は、立派な馬の首を飾っていた鉄の鈴を取り去り、
  それらを深淵の縁に、危険な植物のように、生やしてし
  まいました」
  (René Magritte, "La ligne de vie,1938, in MAGRITTE
  Catalogue Raisonné, V,p.13)

 

「最も日常的な物に悲鳴を上げさせたい」。これこそシュー
ルレアリスムの表現として至言ともいうべき言葉だろう。



もっと時間に余裕をもって行けば良かったと後悔している。
6月29日まで開催しているので、スケジュールが合えば、
再訪したい。