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感想ブログ~演芸(落語・浪曲・講談)etc.~

国芳と幕末

 2012年1月14日


「没後150年歌川国芳展」
@森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ)

この「森アーツセンターギャラリー」という美術館、
とても行き難い。
市部住みの田舎者のやっかみかもしれないが、
「ズーヒルギロッポン」森タワー52Fなどという、
展望台と同じ高所にある。


ものすごい混み様。人垣で殆ど作品見えず。
しかし、「武者絵」の迫力は伝わってきた。
国芳は、やはり「戯画」が面白い(春画も凄い。
残念ながら今回の展示には皆無だが)。
  

歌川国芳は寛政9(1797)年江戸日本橋本銀町に生まれ、
文久元(1861)年、現在の中央区日本橋人形町で没した。
所謂「幕末」を生きた絵師だが、作品には、総じて
「モダン」な精神が看取される。つまり、とても
「近代的」だ。

 
実見したかった作品の一つ『東都名所 浅草今戸』
「今戸焼」の窯と職人の姿が描かれている。
図録の解説に、
 
 
「本作にみる奇妙な形の窯は強いて言えば
 銅版画の先駆者・亜欧堂田善の作例に通じるが、
 化物めいていて国芳ならではの奇想といえるだろう」


とあるが、私には典型的な「達磨窯」がそのまま描かれて
いるようにしか見えない。

 
国芳は猫好きだったらしく、猫尽くしの絵がたまらなく愉しい。
 
 
帰宅して図録を見ていたら、
 
 「(死絵―落合芳幾画―に示されるように)国芳は浅草八軒寺町
 大仙寺に葬られたが、墓石はその後二度移転し、現在は東京都
 小平市上水南町の日蓮宗大仙寺にある。」


という記述があった。御本人は(墓石だけど)割と近くに
おられたのですね。




幕末太陽傳 デジタル修復版」@テアトル新宿
 
 1957(昭和32)年7月14日公開。
 監督:川島雄三
 出演:フランキー堺石原裕次郎左幸子南田洋子小沢昭一岡田真澄
     金子信雄山岡久乃菅井きん西村晃熊倉一雄 他
 音楽:黛敏郎


 
テアトル新宿は久し振りで、大昔学校(高校)をサボって、
ヴェニスに死す』
ジャスト・ア・ジゴロ二本立てを観に行った、
という、甘酸っぱい想い出を暫し反芻する。
その前に、花園神社にお参り。
 

この度「デジタル修復版」ということで全国ロードショー
公開された。
奇しくも国芳が生きた幕末が時代設定の映画で、
居残り佐平次』『品川心中』『三枚起請』『お見立て』
などの、有名古典落語をモチーフとしている。


主人公「いのどん」(この映画では、フランキー堺が演じている)
のように、機転がきく頭の回転が早い、「歓待の掟」を熟知した、
人生偏差値の高い人間は、観ていて心地好い。しかし、落語の
居残り佐平次もそうだが、結局主人公は「逃走」する。



落語ってけっこう簡単に死んだり殺したりして、すべて「無きもの」
にしようとする噺が多いような気がする。中には「死んでも気がつ
かない」「殺しても死なない」というのもあるけれど。


「そこから」の逃避、忌避。


それ故のカタルシス。落語に強く魅せられる理由は、そのあたり
にあるのかもしれない。