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感想ブログ~演芸(落語・浪曲・講談)etc.~

La chaise rembourrée avec des noyaux de pêche

7月に入り、梅雨が明けて猛暑日が続いている。
明日で震災から4カ月。今日も朝9時30分頃、東北地方で
震度4の地震があり、津波注意報が発令された。関東地方
でも久し振りにけっこう揺れた。まだまだ安心できる状態
にはない。


原子力発電問題もまったく解決していない。寧ろこれから、
放射能汚染の実態が顕著になってくる。そして九州電力が、
原子力発電所を再開させようと、関連会社等に県民を装って
メールを送らせたという、「やらせメール」問題が浮上。


もうまったく分からない。「狂っている」としか思えない所業
だが、精神がおかしいわけではない、という所が本当に恐ろしい。
傲岸不遜極まりない、暴力団の親玉然とした松本復興担当相は辞
任。後釜に東北出身で地元に明るい平野氏。最初からそうすれば
良かったのに…もう溜息しか出ない。



もしかしたら、震災や諸々のストレスから来る重圧に耐えきれず、
落語に逃げているのではないだろうか、と思えてきたが、それの
何が悪いっていうんでぃ。と開き直りつつある今日この頃である。



そして7月5日、仕事をほぼ定時で終えて、いそいそと赴い
喬太郎 三三 桃太郎 三人会」
練馬文化センター小ホール(つつじホール)


この会場には、今年の初め(1月26日)に「談志一門会」
で来ている(大ホールの方)。とにかく、「トークのみ」の予定だっ
た家元が、声を振り絞って子別れを演じたことだけは記録し
ておきたい。
その鬼気迫る様子に、私は気が遠くなりそうな、ベタな表現だが
魂を持って行かれそうな感慨を覚えたのだった。



練馬の駅に着いたら雷雨でどしゃ降り。折り畳み傘を持っていた
のだが、迷った末長傘を買った。しかし会場まで歩くだけだから、
余計な買い物だった。帰りは止んでいたし。


この日一番楽しみだったのは柳家喬太郎師の御尊顔を、初めて実
見させて頂ける事です。



幕が開いて桂宮治さん『元犬』桂伸治師匠の御弟子さん。
この噺は、個人的にすごく思い出深い。恐らく生まれて初めて聴い
た落語だと思う。小学生の頃、親が買ってくれた、子供向けの
「おはなし」シリーズのテープ(これなんかもう骨董品というか、
「民具」と化しましたね)に、童話の他に何故か落語があって、
この噺と田能久』『寿限無が収録されていたのだ。


声の主がどの落語家さんだったかまでは思い出せない。
小学生に「焙烙」(ほいろ)なんて分かったのだろうか…
そもそも落語という表現形態及び「落ち」「下げ」という
ものが理解できていたかどうかも心許ないが。

 


昔昔亭桃太郎師匠『ぜんざい公社』
ぜんざい食べるのに、ものすごく色々な手続きが必要で、
盥回しにされて右往左往する噺。シュールというか、
カフカの不条理小説みたいだ。桃太郎師も初めてなのだが、
赤塚不二夫に顔が似ている、ということも含めかなりツボ
だった。
「出番表」に掲載されたプロフィールに「決して人生を語った
りしない爆笑落語家としてコアなファンからマダムや若い女
層まで大人気」とあるが、大きく肯ける。

 


柳家三三師匠『鮑のし』
。相変わらず研ぎ澄まされた
佇まい。

 


柳家喬太郎師匠宮戸川。現実の雷雨の話を枕に。
「通し」が聴けて大満足。

 

仲入り。落語を全席やって、仲入り後はトークショーのみ、と
いう珍しい構成。携帯でTwitterを見ていたら(書いたりしてません。
見ていただけです)、和歌山県震度5強地震、というニュース。
もう日本で安全な場所などないのですね。



幕が開くと、パイプ椅子に座っている御三方。桃太郎師さっさと
私服に着替えてるし。それを喬太郎師が「キャバレーの支配人み
たいだ」と突っ込む。司会は三三師。色々抱腹絶倒のお話の数々。
「こういうことTwitterでつぶやかないように」とのことなので、
当日会場にいた人だけの愉悦、ということにして詳細は書かない。
ただ、桃太郎師が最近三三師が圓生に似てきた、と仰っていたの
が印象的でした。
私は個人的に、『SPEC』(祝映画化・特番ドラマ放映決定)という
ドラマで加瀬亮が演じた瀬文の方が似ていると思います。



実に楽しい一夜だった。ますます落語にのめりこんでしまいそうだ。



タイトルは、「(桃の種を詰めたかのように)座り心地の悪い椅子」
という意味です。思う存分深読みしてやって下さい。