Impression>Critique

感想ブログ~演芸(落語・浪曲・講談)etc.~

第七十回人形町らくだ亭

2017年1月17日
「第七十回人形町らくだ亭」
 
日本橋公会堂(日本橋劇場)



橘家かな文『松竹梅』
春風亭一之輔『味噌蔵』
柳家小満ん『羽衣』
五街道雲助『電話の遊び』
~仲入り~
柳家さん喬『夢金』



鼻水だらだら。涙ぼろぼろ。頭わやわや。体調最悪。
幸いにして咳は殆どなし。熱もない。
迷った末、あまりにも勿体ないので伺った。

 



華のお江戸は日本橋、その名も粋な人形町
小伝馬町に小舟町、小網町に蛎殻町。
江戸の小粋の残滓が薫る。水天宮が目前に。

 



人形町らくだ亭」は、小学館が発行している雑誌
サライ」が主催する、正統な古典落語を愉しむこ
とを是とする、通向けの落語会である。出演する落
語家さんはレギュラー制で、
柳家小満ん柳家さん喬五街道雲助春風亭一朝
古今亭志ん輔の五人の師匠を軸としている。

 



今回のこの顔付け。宛ら現代落語の粋を集めたかの
ような豪華さだ。
平日の夜に日本橋まで出張るのは少々辛いが、欲望
に負けた。
私は落語「通」でも落語スノッブでも何でもない。
ただの落語好きです。

 



一之輔師『味噌蔵』。師の生高座は久し振りに拝聴した。
『味噌蔵』は何と言っても謎のフレーズ「どがちゃかど
がちゃか」だが、さらに突然『La Marseillaise』が出て来
てリヨン生れ…ってどういうことなのか。謎は深まるばか
りなり。

 



小満ん師『羽衣』。昔話の「天女の羽衣」が元になって
いるようだが、静かな語り口と、べらんめえ口調で喋る
天女のギャップが面白い。
小満ん師の高座には、不思議と縁が薄いのだが(以前市馬
師との二人会のチケットを購入していたが、仕事の都合
で行けなくなったりなど)、もっと拝聴する機会を増やし
たい、と心底思わせられた。

 



雲助師『電話の遊び』。電話が出てくるからには明治時
代の噺だが、当時電話は最先端のハイテク機械。それを
使って遊ぶという、正に江戸っ子らしい粋な振る舞い。
太田そのさんの三味線と端唄が、さらに粋を洗練させて
いた。

 



そしてトリがさん喬師。マクラで印象に残っているのは、
師がまだ前座の頃、当時の名人たち―文楽圓生、馬生、
志ん朝―から頂いたお年玉のポチ袋をすべて取ってある、
と仰っていたこと。



『夢金』、その清冽なこと。耳が心地良過ぎて、ややえ
げつないタイトルの意味さえ調えるかのような風情だっ
た。

 



この落語会、顔付けがとても豪勢であるにも関わらず、
木戸銭は吃驚する程リーズナブルで、本当に素晴らし
い落語会だ。
詰まった鼻をぴーぴーいわせ、何か分からんけど横隔
膜がぐるぐる鳴って、もしかしたら周囲に迷惑をかけ
ていたかもしれない挙動不審の風邪っぴきには、勿体
ないことこの上なし。



しかしながら、堪能させて頂きました。