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感想ブログ~演芸(落語・浪曲・講談)etc.~

ラファエル前派at六本木(vill dans le pays)

2014年03月21日

「テート美術館の至宝 ラファエル前派」展
@森アーツセンターギャラリー(六本木)




「ラファエル前派」がテーマの美術展に赴くのは何度めだろうか。
それにしても。


この「森アーツセンターギャラリー」という展覧会場は、
六本木ヒルズ内森タワー52階などという、
素晴らしくセレブでスノッブな場所にあり、
行く度に胸糞悪い思いをさせられる。
チケット一枚買うのも大ごとである。



案内の兄ちゃん姉ちゃんに、荷物みたいに扱われつつ、
エレベーターに乗って52階までいくわけですが。
同じ階に展望台への入口があって、そっちへ行く人の中には、
辺り憚らず大声を張り上げている田舎気質丸出しな感じの人
も見受けられる。


と申しますか。こんなお「タワー」に住んで眼下を睥睨した
りするのがお好きな人間こそ正真正銘の「田舎者」なのだと
思います。



ラファエル前派の絵画のなかでは著名なジョン・エヴァレット・
ミレー『オフィーリア』。モデルは後年同じくラファエル前派の
メンバーであるダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの妻となるエ
リザベス・シッダルだが、浴槽に湯をはってポーズを取らせた、
というエピソードを想起すると、やや陳腐に映ってしまう。



ロセッティの『ベアタ・ベアトリクス』(この絵のモデルもエリザ
ベス・シッダル)と『プロセルピナ』(こちらのモデルはウィリアム・
モリスの妻となったジェーン・バーデン)が並んでいる構図が壮観。



エドワード・バーン=ジョーンズの大絵『「愛」に導かれる巡礼』
も圧巻です。



しかし個人的に最も気になった絵はシメオン・ソロモン
『ミティリニの庭園のサッフォーとエリンナ』だった。
ソロモンは、ラファエル前派の多大な影響を受けた画家
だが、1873(明治6)年に同性愛を理由に逮捕され、画家
生命を奪われて、晩年を救貧施設で過ごした不遇の人
物だ(因みにオスカー・ワイルドが投獄されたのは1895年)。
詩人のスウィンバーンとの云々、などはどうでも良い。



ソロモンの「画面」は、coffretのなかで朽ち果てていく
薫り高いpoudreのように、儚く、切ない。
御多分にもれず『眠れる者と見守る者』(The sleepers and
that watcheth)が好きだが、本物は1989年、今は無き伊勢丹
美術館で開催された「ヴィクトリア朝の絵画」展で観たことがあ
る(図録保持)。



現在三菱一号館美術館でも同時期の英国美術の展示、
「ザ・ビューティフル 英国の唯美主義1860-1900」が開催
されているが、何故かぶってしまったのだろうか。
(因みに両美術館は「相互割引」というのを実施しており、
どちらか先に行った方のチケットを持っていくと、200円
割り引いてくれるようだ)



しかしいずれの美術展にも、大好きなジョン・ウィリアム・
ウォーターハウスの作品の展示はない様子。残念。
単独での展覧会を切望。