2012年12月31日
『映画 立川談志』@東劇
”イリュージョン落語”の定義・本質は理解し難い。
しかし私は談志版『やかん』が大好きだ。落語の
神髄というのはこういうものを差すのではないだ
ろうか、と一介の客の分際で勝手に想像してしまう。
『芝浜』は暮の定番噺(ベートーヴェン「第九」的な)
なので、噺自体が予定調和であまり好きではないのだが、
他の落語家さんと聴き比べてみると、やはり談志版は別格、
と思わせられる。
先月末に談志と一歳違いの父が同い年・数日差の命日で亡く
なったので、談志版『芝浜』を聴くとどうしても夫婦を父母
に重ねてしまう。父はまさしく落語の中の登場人物のような人
だった(下戸ではあったが)。
映画だけれど、高座が終わる時思わず拍手したくなった。
だが他の客が無反応だったので、一人だけ拍手するなど
というこっ恥ずかしいことは出来なかった。『芝浜』の最後、
おかみさんが「酔っちゃえ!」と言う場面で色々な感情が
綯い交ぜになって涙腺が決壊した。
エンディングクレジット後、ぬいぐるみのクマちゃん(名前失念)
の鼻にキスする談志。とてもあの至芸をものとする落語家と
同一人物とは思えない。涙と鼻水を垂らしながら微笑んでしまう。
画面が滲んでよく見えず。
映画館を出たら大雨だった。