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感想ブログ~演芸(落語・浪曲・講談)etc.~

Nuit blanche

 

2011年6月18日、ぴあ主催・制作立川企画による
rakugoオルタナティヴvol.2談笑ダブルス
東京物語に赴きました。場所はvol.1と同じ草月ホール
主役は立川談笑師で、昼は柳亭市馬師、夜は立川志らく師がゲスト。
それぞれ対談あり。面白くないわけがないので、通し券を購入。
しかしこのままでは、本当に落語貧乏になりそうな気配。


PM2:00、昼の部開演。


開口一番は志らく師の御弟子さん、立川志らべさんで『持参金』

立川談笑師匠『堀の内』。「お祖師様」が出て来るので、当然
そういう「毒」が放出されるわけですが、心配になってしまう。
噺は究極のドタバタ。これでもか、というぐらいの「ボケ」の連続。



柳亭市馬師匠『首提灯』。首切られても気づかない(死な
ない)酔っ払いの描写が秀逸。昔TVの面白映像集番組で、思いっ
きり頭に包丁が刺さったまま買い物しているお婆さん(アメリ
だったか)の映像を見たことがあったな…全然関係ないですが。
あれはやらせだったのだろうか。


仲入り。


談笑師匠子別れ。時代設定が昭和の東京になっていた。
で、オチが「帰って来たウルトラマン」だったのですが…あっ
もしかして談笑師匠が最もこの落語会を体現した、或いは主催
したぴあの意向に沿った落語家さんなのだろうか。果たして
オルタナ」落語家!



特別対談柳家小さんの東京談笑師と市馬師の対談。
そしてやっぱり出て来た対談の辻斬り司会者「ぴあ」の
戸塚さん。市馬師匠が、本当に思い出深く師匠の小さん
について語るその語り口そのものが芸のようです。五代
目小さんは大食漢、とか孫のあの御方の忘れ物を届けに
学校に行ったことが頻繁にあるとか…やっぱり馴染みの
お店は多くが無くなってしまったらしい。しんみり。
最後は一節唄って頂いたり(リクエストした客がいた)。
相も変らぬ美声。



夜の部まで1時間程あるので、また休憩出来る場所を
探してうろつく。雨がけっこう降って来てしまった。
折りたたみ傘しか持っていなかったので、コンビニで
ビニール傘を買う。前回とは違う、禁煙の珈琲店にの
たくり込んで、珈琲とケーキ。



夜の部開口一番は、再び志らく師のお弟子さん、
立川らく次鮫講釈。え?突然「宝塚
歴代トップスター講釈」に。



談笑
イラサリマケー。『居酒屋』の現代版。
店員が出稼ぎイラン人という設定で、下ネタ満載。下ネタを
まったく受け付けないわけではないですが、あまりに直截な
のは個人的にあまり好きではないです。本当に好みの問題だ
と思います。



すぐに談笑黄金餅。何故こうなったかと言うと、
昼長野で独演会だった志らく師が時間的に間に合わないから、
ということらしい。ここら辺から近くの席のお爺さんが茶々
を入れるようになってきて、内心ドキドキもの。「そっちに
逃げるな」とか野次りだした…



仲入り。周囲の人は「痛々しい」親子をガン見。そろそろ高
座中にけっこう大きな声で話し始めている。大丈夫なのか。
両師匠、どう対処する?緊迫する夜の部(私だけかもしれないが)。



トリは立川志らく師匠唐茄子屋政談
余談だが、先日談春師匠「アナザーワールド10」で、
この噺の後半部分を談志家元が改作した人情八百屋
を聴いた。因みに「唐茄子」が日本原産の瓢箪みたいな
かぼちゃだということを初めて知りました。でもそれが
何故「唐」の「茄子」と言われたのか、まだよく分から
ない。


おおっと。左後方から携帯の着信音。なかなか止めない。
プチ殺意。恐らく客の大半が同じ気持ち…しかし志らく師匠、
うまく噺に織り交ぜる。大人やなあ。


え?「目で煎餅を噛めと言うなら噛みます」と若旦那。
ええー!?
去年から俄かに落語の高座に足を運ぶようになった新参者
(落語自体は、小学生の時分から好きでした)ですが、中学
生の時に大流行していた傑作漫画パタリロ!の作者
魔夜峰夫氏が、相当な落語好きらしく、よく作品の中に
(江戸時代の設定の時もあるし。越後屋の「波太利郎」と
か言って)落語の一場面とか科白が出て来ることは知って
いましたが、「目で煎餅を…」は、てっきり魔夜氏のオ
リジナルギャグだと思い込んでいた。落語に入れ込むよ
うにならなければ、一生そう思っていた所だった…



さらに因みに、現在読んでいる古典落語 志ん生
(飯島友治編 ちくま文庫)の一編、お化長屋の最後に、
人を脅かす言葉として「ももんがあァ」というのが出て来
るのだが、これまたパタリロ!に出て来ていたので、
てっきり魔夜氏のギャグだとばかり…うう。恥ずかしい
…多分まだ魔夜氏のオリジナルギャグじゃなくて、落語の
ネタだった、というのが他にもあるんだろうなあ。


編者飯島氏のお化長屋の解説に「江戸時代から明治に
かけて、人を突然脅かす時、両手の小指で口を左右に開き、
同時に人差し指でベッカンコーをして「ももんがァァ」と
言うのが流行った」とあるのだが、そうと知って、この
「ももんがァァ」が大変気に入ってしまった。


件の親子?が気になってあまり集中して聴けなかったが、
最後のお楽しみ、志らく談笑両師匠の特別対談「立川談志
の東京」。


人間の業を肯定する家元が、何故か電車内などの公共マナー
に厳しい、という大好きなエピソードなど。独演会の会場に
行く途中、降りて歩きたい、と言いだして雨の中車を降りて
歩き出してしまった家元。一緒にいた談笑師「いいのかな」。
「家元って小雨が好きなんですよね。雨蛙みたい」。何とお
可愛らしい。一方会場では、時間になっても来ない家元の代
わりに何回も高座に上がるはめになった志らく師。遂には、
志ん朝談志の真似をしながらの笠碁まで披露。
うわ。何ですかそれ…観たい聴きたい今すぐに。



面白い話の連続。東京とかあまり関係なくなっちゃった気が
しますけど。米朝師が痛い、やめろ、と言うまできつく抱き
しめて離さなかったというエピソードなど。
「そろそろお時間ですが、最後に質問などはありますか?」
という戸塚さん。「三題話やれ!」って例のお爺さん。
凍りつく会場内。お爺さん完全に酔っ払ってるみたいだった。


帰る時は雨上がっていた。


タイトルは「眠れない夜」という意味(「白夜」を表わす言葉
でもある)。blancheは普通「白い」という形容詞の女性形だが
(つまり nuit 夜、は女の子の名詞。白いの男性形形容詞はblanc)、
この場合は「何もない、空の、実質のない」という意味を表し
ている。



実質のない夜。
起きて何かしていても、眠れなければ空虚なのか・・・



ところで、何故フランス人は原子力を是とするのだろう。