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感想ブログ~演芸(落語・浪曲・講談)etc.~

講談協会定席 如月 広小路亭講談会

2022年2月23日(水祝)

 

講談協会定席 如月 広小路亭講談会」

 上野広小路亭

 

 

田辺一記『三方ヶ原軍記~五色備え』

一龍齋貞寿『祐天吉松「飛鳥山親子の出会い」』

田辺凌天『谷 文晁「名画の虎」』

宝井琴星八百屋お七

~仲入り~

神田菫花『西遊記金角大王銀角大王」』

田辺凌鶴『名刀捨丸』

 

 

実に初めて講談の定席に伺った。有難い。
永谷の演芸場の一つ、上野広小路亭には伺う機会を
逸していたが、今年に入ってから何度か伺う機会を
得ている。とても聴き易い演芸場だ。
開演前に前座さんが高座に上がるのは落語の寄席と
変わらない。一記さんの前にもどなたか上がっていた。
そう言えば浪曲定席にその慣習はない。

すべての出演者の振り(マクラ)が面白く、私小説短編講
談を聴いているようだ。

貞寿先生は木馬亭講談会にも出演されるので、早い出番
だったようだ。『祐天吉松』の飛鳥山親子出会いの場は、
浪曲でもお馴染みの話でよく聴いているが、当時王子の
飛鳥山の花見時に「かわらけ投げ」の遊びの風習があっ
たことを浪曲を聴いて初めて知った。

かわらけは素焼きの土器皿で仕事柄「遺物」として認識
しており、身近に考古学的に研究している人もいるがそ
の風習は知らず、実に奥が深い「もの」なんだな、と認
識を新たにした。

凌天さんの谷文晁の話は虎年に相応しく、講談らしい芸道
話。雲州松江松平出羽守もお馴染みの登場人物。

琴星先生の『八百屋お七』。あの振りからこの話になると
は>笑。琴星先生の面白さは多元的だ。

菫花先生は代演で、西遊記の講談版を初めて聴いた。

トリは凌鶴先生。『名刀捨丸』は浪曲版の『山の名刀』を
聴いたことがある。刀を芯にめぐる因果が切なく響き、聴
き応え十分だった。

講談も落語も浪曲も、寄席は至極愉しい場所である。
講談ニワカ客である私も往年の講釈場の復活を願う
一人だ。





座・高円寺寄席 講談、浪曲たっぷり!

2022年2月20日(日)

 

「第12回高円寺演芸まつり
 座・高円寺寄席 講談、浪曲たっぷり!

 @座・高円寺


神田伊織『五条の橋』

玉川太福・玉川みね子
男はつらいよ第20作「寅次郎頑張れ!」』

田辺銀冶『夢二 黒船屋』

~仲入り~

一龍齋貞寿『鎌倉星月夜』

玉川奈々福沢村豊子
『甚五郎旅日記「掛川宿」』

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毎年恒例の高円寺演芸まつり。
講談と浪曲のみの会があるのが特徴的である。
今年は若手の講談師、浪曲師の会も新設され
たようだが、残念ながら伺えなかった。


話芸を聴くにあたり顕著なのは、まず芸に発
展しているからこその「音」「調子」「トー
ン」の心地よさである。
多分に体調の良しあしが関わってくるが、
睡眠不足だったり疲れていたりすると、
聴き惚れるような声で、
整ったリズムで、
語られたり唸られたり奏でられると、
全神経が鎮められてしまう。
まるで枯渇した心の泉になみなみと水が湛え
られるがごとく。
浪曲は大人の子守歌」とはよく云ったも
のである。
張扇で釈台を叩くパアン、という音、三味線
の超絶技巧な音に咎められて現実に引き戻さ
れる。話の筋が分からなくなるのでそれで構
わない。でも心地よさを手放したくない、と
いう思いが拮抗する。


睡眠不足は人類の敵だ(申し訳ございません)。


太福さんは何をかけられるのだろう、と期待
していた。最近寄席でもかけている「寅次郎
頑張れ!」の15分ぐらいのバージョンと仰る。

おや、持ち時間が寄席と同じくらいなのは寂
しい(高円寺「寄席」ではあるが)。
しかし好きなミュージシャンのライブでヒッ
ト曲を聴くように、節や登場人物の台詞が分
かってくるのは楽しい。博やワット君、幸子
が出ると「待ってました!」とばかりに客席
から拍手が起こる(勿論自分もする)。


銀冶先生は生高座自体を初めて拝聴する。
生粋の艶やかさ、華やかさと良い意味のした
たかさを感じる。
演目は竹久夢二が主人公の自作新作講談。
自分の野暮天ぶりが恥ずかしくなった。


貞寿先生の『鎌倉星月夜』は初めて拝聴。
一見現代もののような演題だが、鎌倉時代
恋物語だ。
貞寿先生は声そのものに説得力がある。


トリの奈々福師匠の「掛川宿」も初聴きだ。
国友 忠伝の甚五郎ものは軽快な展開で、
浪曲のスタンダード・ナンバーの趣き。
国友 忠の相三味線をつとめられていた豊子師匠
の三味線の音は、歴史の重さを感じさせつつも、
常に瑞々しい。


渋谷らくご的に通常は滅多に観られない顔付け
と番組で、得難い会だった。
来年も期待したい。

柳家喬太郎みたか勉強会 昼の部

2022年2月19日(土)

柳家喬太郎みたか勉強会 昼の部」

 三鷹市芸術文化センター 星のホール


柳家さん坊『のめる』

柳家喬太郎禁酒番屋

~仲入り~

柳家やなぎ『偽り家族』

柳家喬太郎『任侠おせつ徳三郎』

 

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ちょうど1年振りの喬太郎師みたか勉強会。
チケットを買う際その日の夜のスケジュー
ルが未定だったので、初めて昼の部のチケッ
トを買った。

その日昼の部にはCS「寄席チャンネル」の
撮影が入っており、それを知り昼の部にし
たことを後悔した。
マクラに制限がかかり過ぎていた。
知っていたら夜の部にしたのだが。

コロナウイルス関連その他でメンタルが不調
のため、慢性睡眠不足で所々意識が遠のいた
場面があり、大変申し訳なかった。
衣・食・住・眠としたいほど、睡眠は人間に
必要不可欠である。

喬太郎師の『禁酒番屋』を初めて聴けた。

やなぎさんが新作をかけられたのが意外だっ
たが、何となく喬太郎師かあるいは志の輔
作の新作落語のテイストが感じられ、とても
面白かった。

そして『任侠おせつ徳三郎』に瞠目した。
途中まで『おせつ徳三郎』(下)、「刀屋」か
と思っていたら、えっ?何何何?という展開
になり、終演後なかなか現実を取り戻せなかっ
た>笑。

夜の部は小三治師もご登場の弾けたマクラ、
『短命』『双蝶々「定吉殺し」』(!)だったら
しい。
昼夜両方が得策かもしれないが、どちらかと言
えばやはり夜の部が正解だったと思う。

玉川太福・宝井梅湯二人会

2022年2月12日(土)


玉川太福・宝井梅湯二人会」(第十二回)
 @らくごカフェ


宝井梅湯『ねぎま(葱鮪)』

玉川太福・玉川 鈴
男はつらいよ第17作
 「寅次郎夕焼け小焼け』

~仲入り~

太福・鈴『天保六花撰
       「河内山と直侍」』

梅湯『関東七人男「沢潟屋強請」』



太福さんと梅湯さんの二人会。
最近は前読みなし。
チラシの惹句「たっぷり浪曲、がっつり講談」
そのままに、大変聴き応えがあり楽しく収穫が
多い会だと思うのだが…


梅湯さんの一席目『ねぎま(葱鮪)』は演題から
してユニークで、落語の『目黒のさんま』に似
ていると思ったが落語にも同様の噺があり、
ねぎまの殿様』というらしい。講談の方が元
のようだ。
煮えたぎった葱を食べて喉に芯が飛び出す「ねぎ
鉄砲」の描写や、主役の殿様雲州松江の松平「不
昧公」が偶然名が体を表す状態なのが実に面白い。
梅湯さんの高座はいつも読み物自体がとても面白
い。


太福さんの一席目は鈴さんとペアルック(古語)の
様相。藍(紺青)色で眼に浸透するような落ち着い
た色だ。鈴さんの着物の方が高価とのこと。
男はつらいよ」シリーズの名作「寅次郎夕焼け
小焼け」。何度聴いても胸に沁み入る。
太福さんが演じる女性は、男性が女性を演じる際
によくあるわざとらしさの類があまり感じられな
い。何故だろう?といつも思う。


仲入り挟んで太福さんの二席目は「河内山と直侍」。
ゴルフが苦手なのと同じ理由で歌舞伎が苦手なので、
歌舞伎(芝居)がらみのクスグリを入れられると理解で
きず申し訳ないと思うが、たとえ分かったとしても
心得たとばかりに笑うのはスノッブじみていやだし、
まさにそれが歌舞伎が苦手な理由であるところの、
「まあ、このクスグリは歌舞伎を知らないあんたら
には分からんだろうがね」という伝統芸能エリート
意識が透けて見えたら辟易してしまう。
玉川系統の「河内山」は疣膿だらけの尻で高い座布
団に座りやがって、という場面が妙に強調されてい
るし、太福さんの場合さらに自意識過剰にならざる
を得ないクスグリが加わるので聴いていて辛くなっ
てくる。あくまでも極個人的な面倒臭い理由で苦手
な演目だ。とは言え歌舞伎文化を全否定する意図は
なく、『中村仲蔵』は大変好きな演目である。


梅湯さんの二席目は連続講談「関東七人男」の一話
沢潟屋強請」。梅湯さんは連続講談を多数持って
おられ、この会ではそのうちの一席を読まれること
が多いようだ。
先般から懸念の、東 武蔵『明石の夜嵐』は歌舞伎の
『伊勢音頭恋寝刃』がネタ元だが該当する場面がな
く、題材が同じ連続講談『古市十人斬』との関係は
どうなのかが未だ判然としないので、是非『古市十
人斬』全編、特に「明石の夜嵐」の段を聴いてみた
い。浪曲『明石の夜嵐』とはまったく違う話とのこ
とだが、となると浪曲は完全に東 武蔵の創作なのだ
ろうか。


この二人会でいつか浪曲、講談それぞれの『明石の
夜嵐』を拝聴できたら、という願いは悲しいかな夢
か妄想に過ぎないだろう。



第四十七回玉川太福”月例”木馬亭独演会

2022年2月11日(金祝)


第四十七回玉川太福”月例”木馬亭独演会
 @浅草木馬亭


玉川太福・玉川みね子
『明石の夜嵐』

玉川太福・玉川 鈴
『サウナ探訪#1』

~仲入り~

太福・みね子
陸奥間違い』

 

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”月例”木馬亭独演会は慣例だと月初めの週末開催が
主だが、今月は11日祝日の夜という稀日。
前読みもゲストもなしの三席。ファン冥利に尽きる。

一席目『明石の夜嵐』。
ネタおろし後三度目だが、今まで太福さんの節では
聴いたことがない高い調子や三味線の手の部分があ
るので、紛う方無き古典だけれども新作を聴くよう
な耳覚ましさがある。

東 武蔵の音源は独特の語り口が面白いし、合い三味
線の東 登美男が素晴らしい。
その音源では東 武蔵自身が「『伊勢音頭恋寝刃』の
抜き読み、『明石の夜嵐』全編(前編ではないと思う)
はまず、これに留むる次第なり」と言っているが、
講談の『古市十人斬』とはまったく無関係で、すべて
東 武蔵の創作なのだろうか。けっこう残酷な場面があ
るし、妖刀村正、青江下阪が出てくる(副題「たたる妖
刀」)ので刀剣ファンにも刺さりそうだ(刀だけに)。


二席目『サウナ探訪#1』。
ソーゾーシー新春ツアーでネタおろしされた新作浪曲
昨年12月の木馬亭独演会でネタおろしした身辺雑記浪
曲『付け根攻め』を発展させたものであるということを、
風の便りで聞いていた。
だとすれば申し訳ないが私は多分笑えない。胸の中で不
穏な風が吹き、嵐となり気持ちが小さな舟のごとく翻弄
され始めた。

ツアーの某所ではウケなかったとのこと。実際にその場に
いなかったしその土地の落語好きの傾向は分からないが、
某一門の師匠方が好きなことと、太福さんの浪曲を理解で
きないのはまったく別の話だ。

演題から自明だが、設定はかの渡辺篤史が案内人のTV番組
「建物探訪」。おお?フィクションに昇華した結果不穏な
部分が消えている!
やはりお婆さんが出て来て志村けん師匠の「ひとみ婆さん」
に似ているが…
最後のオチに当たる部分でベタだが思わず「ぶはっ!」と
吹いてしまった。何だろうこの敗北感は?完全敗北。
その上節と三味線の伴奏まで付いている。何なのだろうこ
の愉し過ぎる人は。#2に期待までしている自分に驚く。


三席目『陸奥間違い』。
何故この演目?と思ったが、何度聴いても愉しいし、
カン違いの節はいつ聴いても素晴らしい。
二代目木村忠衛の陶然ものの節の終わりに、お客が
「よっ!ただえ!」と掛け声をかけるように、いつ
か私も「よっ!だいふく!」(「ふくたろう!」かも
しれないが)と声を掛けられる日が来るだろうか。

松鯉・太福二人会 その一

2022年2月7日(月)


「しのばず寄席特別興行
  松鯉・太福二人会 その一」
  @お江戸上野広小路亭


神田鯉花『寛永宮本武蔵伝「狼退治」』

神田松鯉赤穂義士外伝「雪江茶入れ」』

玉川太福・玉川みね子
天保水滸伝「笹川の花会」』

~仲入り~

太福・みね子
男はつらいよ第二十作「寅次郎頑張れ!」』

松鯉『寛永馬術「出世の春駒」』

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白手袋は太福さんの手です


夢か奇跡のような二人会。
年頭の「玉川太福”月例”木馬亭独演会」でこの二人会の
チラシを見て硬直し、動悸が早まるのを自覚した。
光の速さで電話予約した(盛りました。翌々日くらいです)。

鯉花さんの高座はとても久し振りだ。
クールビューティーな女優さんのような花の顔(かんばせ)
から緊張感とともに繰り出される狼の遠吠え。
何か居たたまれない気持ちになりつつも聴けてうれしかった。

御二人とも終演後に物販予定の九州の嘉穂劇場で収録した
DVDを意識した演目を一席ずつかけられたようだ。

松鯉先生の一席目は義士外伝「天野屋利兵衛」の前日譚的
な話「雪江茶入れ」。大変に好きな話だが、その理由は名
物器物が主題だからで、冒頭浅野内匠頭が宝物蔵で道具類
を虫干しする場面は垂涎ものである。是非その場に立ち会
いたいと思わずにいられない。

昨年末、末廣亭の恒例松鯉先生主任義士伝興行で、もう一
つの義士外伝『鍔屋宗伴』を拝聴したが、耳目釘付けとな
り全身全霊で聴き入った。とは言え滑稽味が強い寄席で大
いに受けそうな話なので、固唾を飲むような緊張感はまっ
たくなく、気持ちは穏やかだった。

天野屋利兵衛、鍔屋宗伴共に義士ではなく市井の商人である。
その滲み出る静かな義侠心を語るに松鯉先生の声は説得力が
あり過ぎる。まさに”選ばれし声”と言えるだろう。


太福さん(師匠、先生と呼ぶタイミングがまだつかめない)の
一席目は「笹川の花会」。太福さんの古典持ちネタで一、二
を争う程に好きな演目である。曲師がみね子師匠であること
も重要だが、いつ聴いても外れがない。
今席は啖呵のときの表情が明らかに昨年とは違って見えた。
それは特定の人々のためではなく、不特定多数の人々のため
の”スター”の表情だった(やや願望を含む)。

仲入り後太福さんの二席目は昨年末にネタおろしされた「男は
つらいよ」シリーズ第二十作「寅次郎頑張れ!」。
私はいつも事前に映画を観ているが、演者さんにとっては浪曲
で初めて観聴きしてどう思ったか、浪曲を聴いて映画を観たく
なったと思うか、の方が重要だと考えられる。
寄席でかける場合は「男はつらいよ」を知らない客が多数を占
めるが故に、さらなる要約力、訴求(アピール)力が必要となる。
先月に寄席の定席で聴いたが、切口鮮やかな要約力に感心して
しまった。

ネタおろしフルバージョンでは、ワット君が幸子をしくじって
傷心状態で家に帰る際、胸がしめつけられる程に悲哀漂うカン
違いの節があったのだが、短縮バージョンのためか、あるいは
やってみて不要だと思われたのか、それ以来聴いていない。
愁嘆場の後にコントみたいなガス大爆発の場面が来るとは、節の
配置が絶妙至妙だ、と思っていたのだが…聴き手の勝手な思い込
みでしかないのだろうけれども至極残念である。
予習は性分なのでこれからも事前に映画を観ることはやめないが、
客として聴く耳を育てるべきだと改めて思う(太福さんの会に伺い
始めた当初よりは育っていると思いたい)。


松鯉先生二席目トリネタは「出世の春駒」。講談という話芸の
記号のような、目出度くも天晴れな話(落馬して死人が出るのは
除く)で終演。
望むところを成すには自らに恃まずまず馬(人)の心を動かすこと。
御二人とも声という天賦の才と語り芸で人心を動かす力を持して
おられる。


夢のような一夜を過ごさせて頂き、席亭様にも感謝申し上げたい。
この興行主(主催は永谷商事株式会社)だからこそ出演者の出演料が
保証され、非常に良心的な木戸銭が実現しているのだろう。
有難い。
その一、とあるからにはその二にも万難を排して駆け付けたい。




浪曲定席木馬亭令和4年2月

2022年2月6日(日)


浪曲定席木馬亭令和4年2月」
 @浅草木馬亭



東家千春・馬越ノリ子『唐人お吉』

港家小ゆき・沢村道
『塩原多助一代記「命の振袖」』

澤 雪絵・佐藤貴美江
太閤記「藤吉郎の花嫁」』

花渡家ちとせ・沢村豊子
寛永馬術愛宕山の春駒」』

~仲入り~

東家孝太郎・沢村豊子
『大岡政談「徳川天一坊 閉門破り」』

田辺凌鶴『蘇生奇談』

港家小柳丸・佐藤貴美江
神田祭り「吉五郎恩返し」』

木村勝千代・沢村豊子
天保六花撰「河内山宗俊」』

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コロナウイルスの影響で延期になっていた、
日本浪曲協会設立80周年記念公演。
初回は「初代会長木村友衛、七代会長木村若衛
讃えて」。唯一の木村派木村勝千代さんが主任
である。

浪曲定席の場合は落語の寄席定席と違い、最後に
トリにバトンを渡すリレー的要素は希薄で、
一国一城の主の宴の数々が都度繰り広げられる。
一席が終わると幕が閉まり、次の演者の演台やテー
ブル掛けを準備するやや騒がしい音は、さながら急
いで城を壊し、建て直すがごとくである。

千春さん、小ゆきさん、雪絵さんの流れが華やか鮮
やかで良かった。
今席はとにかく3人の浪曲師の曲師をつとめられた
沢村豊子師匠が凄かった。いつも同じ形容をしてい
るような気がするが、神がかっていた。

孝太郎さんの「天一坊」はおそらく来月から連続読
みの会をされる布告だろうか。まるで豊子師匠と”仲
良く”鍔迫り合いをしているかのようで、声節と三味
線の激しくも愉しい手合わせに聴き惚れた。

講談は最近注目している田辺凌鶴先生。
『蘇生奇談』は何年か前に宝井梅湯さんの高座で拝
聴したが、明治時代が舞台の西洋寓話のような変わっ
た話。

主任(トリ)の木村勝千代さんは木村一門のお家芸
河内山宗俊」。
勝千代さんの声節と豊子師匠の三味線の音が3次
元の高さ、広さ、深さで聴こえて意識が溺れた。
素晴らしかった。

浪曲師の場合、家一門派のつながりはあるが、声
節は唯一無二だ。今まで多数の家系が途絶えてき
たのだろうが、木村派の後継として遺伝子のよう
なものだけでも残ってほしい、と秘かに願うもの
である。