Impression>Critique

感想ブログ~演芸(落語・浪曲・講談)etc.~

座・高円寺寄席「疾風怒濤 浪曲、講談新時代」

2018年2月18日
座・高円寺寄席
 『疾風怒濤 浪曲、講談新時代』」
 @座・高円寺




玉川太福・玉川みね子
清水次郎長伝 代官斬り』
『地べたの二人~湯船の二人』
天保水滸伝 鹿島の棒祭り』(さわりのみ)
~仲入り~
神田松之丞
天保水滸伝 ボロ忠売り出し』
赤穂義士伝 荒川十太夫



現在絶賛売り出し中の浪曲師と講談師の二人会。
特に浪曲師(&曲師)は初見・初聴で衝撃を受けて以来、
可能な限り生口演に伺い、贔屓にさせて頂いている方。
講談師は意識的にメディアに露出した結果、物凄い勢い
で売れっ子になり、思っていたより早い段階で「今最も
チケットが取れない講談師」になってしまわれた。



そんな御二人の会。万難を排して、という想いで駆け付
けた。(若干誇張している)



高円寺はその期間、第八回高円寺演芸まつりが行われて
おり、この二人会もその一環であった。
長らく使っていた中央線ではあるが、高円寺は今まであ
まり縁がなかった。座・高円寺という劇場を訪れたのは
初めてである。



座・高円寺は複数のスペースがあり、「座・高円寺2」
がある地下2
階では、往年の落語名人のLPジャケットが
壁一面に展示されているコーナーがあった。暫し眺める。



客席は若干前後の席との空間が狭いが、舞台は見易い。
如何にも使い込まれて勝手が良い舞台、といった風情。



太福さん&みね子師匠、初座・高円寺とのこと、舞台
にこちらも初めての浪曲「5点セット」がどおぉん、と
並び、壮観。口演中に湯呑み茶碗を使うのもこれまた初
めて、とのことだが、そう言えば座って演じる古典大衆
芸能の芸人さんが、高座中に湯呑み茶碗を使い始めるのっ
て、何がきっかけなんだろう。



例えば、談春師や志らく師は、何年か前までは湯呑み茶
碗を置いていなかったが、最近は置いて高座中に喉を湿
らしておられる。年齢的なもの、とか何か不文律がある
のだろうか。



「最もチケットが云々」な講談師、その日は3件口演で
ダブルブッキングまで...少し違和感を覚えるくらいな売
れっ子ぶり。そのため、二人会が独演会×2、みたいな
様態になってしまった。



太福さん&みね子師匠、いつにも増して威風堂々、格好
良かった。
客席からのリクエストで、『天保水滸伝「鹿
島の棒祭り』をさわりだけ、お時間まで。「利根の~川
風~袂に入れて~、月に~棹差す~高瀬舟~、」
改めて文字にしてみるととても良い。情景がストレート
に浮かんで来て、美しい。



そして松之丞さん、長講二席を拝聴するのは初めて。
昨今の古典大衆芸能ブーム、落語家・浪曲師の入門者は
増えたが、講談師の方はいない、という。
「で、ここで入門者を募ろうと思ったんですが...どうに
も、人生の先輩ばかりなようで...」ってマクラでいきな
りの年齢disりである。



講談は、演じる方も聴く方も、それなりの知識が必要だ。
勉強の幅が半端ではない。それが入門者が少ないことの、
一つの理由だと考える。
松之丞さんが真打になり、弟子を取れるようになれば、
入門者が増えるだろうと誰もが予測していることだろう。




太福さんの一門、玉川一門のお家芸、『天保水滸伝』の
一席を選んだのは、松之丞さんなりの、太福さんへの
リスペクトなのだろうか。松之丞さんの生口演で、唯一
拝聴したことがあるのが、この『天保水滸伝 ボロ忠売り
出し』だった。汗だくの口演。




そして『赤穂義士伝 荒川十太夫』。現在、演じられるこ
とがあまりない演目だという。
客電を少し落とし、緊迫感があり過ぎて、意識が飛んでし
まいそうなくらいだった。その張りつめた空気を、鋭い眼
光でねめ回しつつ、熱し崩していく...心底痺れました。



終演後、座・高円寺1階のチラシ図書館みたいなコーナー
でチラシを眺めていたら、私服の松之丞さんが出ていくの
が見えた。急いで次の場所に移動しなければならない、
という風情。お若いとは言え、流石にお疲れなのでは...



太福さんの方は、御自身が新作浪曲化している「寅さん」
シリーズの監督、山田洋次氏がいらしていたとのことで、
正にタイトルに違わず「疾風怒濤」な二人会だった。
堪能させて頂きました。