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感想ブログ~演芸(落語・浪曲・講談)etc.~

Gros bleu

あれから1カ月と1週間程経過した。
余震は続き、その余波は内陸部にまで及んでいる。
関東以北は、いつ何が起きてもおかしくない状態
にある。


福島原子力発電所は依然として壊れたまま、
「応急処置」すら覚束ない状況である。
津波地震の被害だけでも甚大だというのに。
原発に関しては、人災であることは明白だ。



人の手に余る「物質」を扱うことを、我々は容認
してしまった。内容をよく読みもせず、悪魔との
契約書にサインしてしまったわけだ。


しかし、そんな危険なもの(米国製なわけだが、
それはあくまでも、地震津波が来ないことを
想定して―と言うか考えずに―作られたものだ)
を、あんな海岸べりに建てるわ、万が一の時の
電源確保なんて考えていないわ、東京電力にし
ろ政府(自民党)にしろ、妖怪の巣窟みたいな原子
力安全委員会(ここの委員長の「斑目」という、
まさに妖怪の親玉みたいな名前のおっさんが、
本当にロクでもない。本当は事故後すぐに現地
に行かなければいけないのに、38日経ってやっと
行ったらしい。対応に追われていて行けなかった
とか、子供の仮病みたいな嘘をつき…)にしろ、
まったく理解できない。



我々はそれを許して来てしまったわけだ。



これを教訓としないでどうする?自然エネルギー
には限界がある、ってそれをどうにか考えるのが
「人知」「科学」だろう。それに日本は電気使い過
ぎだから、セーブすればいい。「温水洗浄機付便座」
なんていらない。電車の暖房もいらない。



仕事中、偶然江戸時代にも何回か地震があり(詳しく
は知らなかったが、地震があったことは勿論知ってい
た)、江戸城(現皇居)をその都度修復した記録があるこ
とを知った。やはり、日本という列島に住む人間には、
天災は宿命なのだ、と諦念のようなものを覚えさせら
れた。



「週間文春」4月14日号、「私の読書日記」
鹿島茂氏が、『歴史のなかの江戸時代』(速水融編、
藤原書店)という本を取り上げている。孫引きになってし
まうが、地質学者の伊藤和明氏が江戸時代で最大の宝永
大震災についてこう述べている。



「日本列島が経験した地震では最大級の規模のもの
と言われています。たぶん南海トラフに沿って、三
つの地震がほぼ同時に起こったと考えていいようで
す。この地震で多くの家屋が全潰し、しかもまた大
津波で大変な被害を出した。しかもこのひと月半の
ちには、富士山が噴火する、つまり宝永の噴火です
ね。おそらくこの地震と噴火は関係あるんじゃない
かと思います。」



「歴史」(学)というものは、ふだん文系の「虚学」と捉えら
れていて、過去の地震や災害の記録等は、「そんな科学技術
が未発達な時代の記録なんか…」と顧みられない傾向にある
が、今これ程「実践」に有益な学問があるだろうか。


「天変地異が宿命」ならば、ただそれに翻弄されるばかりで、
まるで人間に巣を壊された蟻が、何度壊されてもまた造り直
すかのように「愚直」であるばかりでは、「人間」である存
在理由など無だ。そして「科学」を学ぶ人、研究者と名乗る
人は、もっと「人」に興味を持つべきだ。貴方がたとて、人
間に違いないのだから。



それにしても人間は、「忘れる」。「記憶」という優れた機
能を持っているにも関わらず。しかし、「忘れる」というこ
ともまた優れた機能の一つなのかもしれないが。



静岡でも3月15日に震度6強の地震があったが、ほとんど被
害が無かった様子。それは東海沖地震に備えていて、建物が
皆耐震構造になっていたからだという。東京(関東)周辺も、
歴史から学び、忘れず、それに倣うべきだと思う。
未だに「オリンピック」とか言ってる失言爺さんには無理か…

 


4月12日、チケットを買っていたので夜
立川談春独演会「アナザーワールド8」
に赴いた。
成城ホールに行くには、ある路線の電車に乗るのが一番早い
のだが、いつも気が進まない。極私的な気持ちでしかないが、
とにかく必ずロクでもない人間が乗っているし、何か禍々しい
ものを感じてしまう。




何とか10分前くらいに成城ホールに着く。
開演、前座は立川こはるさんだ。ほっとした。
『一目上がり』(ちなみに前日は、突然スペシャ
ゲストが来て、前座なしだったようだ。そのゲスト、鶴瓶
師匠は何と『お直し』をやったらしい。羨ましい)。



談春師匠登場。枕が楽しみです。さあ、師匠は「あの日」
どうされていたのでしょうか。



昼寝していたと。本格的に揺れた時は、嫁と猫と見つめ
合うしか術がなかったと(その図を想像すると微笑ましい。
それで談春家に猫がいることを初めて知った)。


「こういう時は腹ごしらえと。おい、蕎麦屋に電話して
蕎麦取ってくれ」
「はあ?馬鹿じゃないの?来てくれるわけないでしょ」
夫婦漫才。



師匠は独演会を決行するつもりだったらしい(私は幸い
前日行っていた)。しかし電車は皆止まっているし、
興行元にも、御願いだからやめてくれ、と言われたと
いう(師匠はいつも電話する時の描写が黒電話。切る時
は「ガチャ」)。客からの問い合わせも1件のみだった
そうだ。
外国に逃げるのも癪なので二週間閉じこもってご飯食
べることしかしなかったら、手に水疱が出来てしまっ
たという。医者に行ったら「ストレスです」。師匠も
震災ストレスを感じていらっしゃったと。やっぱり根
が繊細、感受性が強い御方なのですね。



『猫久』。とにかく夫婦のやりとりが面白い。
「ほのぼの」噺。談春師匠の日常会話もこんな感じ
なんでしょうか。五代目小さんがよく演っていたらし
いが、弟子の家元はほとんどやっていないとか。

 


仲入り中のギョーカイ人らしき人物の尊大な会話を
苦々しく思いつつ、『紺屋高尾



残念ながら来月のアナザーワールドのチケットは、
色々あって買えなかった。



ところで談春家の猫は何猫なんだろうか。



タイトルには二つの意味がある。「濃紺」と「濃過ぎるワイン」。