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感想ブログ~演芸(落語・浪曲・講談)etc.~

チンと周防大島探訪2~落語と音楽と他いろいろ~

2022年11月17日(木)

 

「チンと周防大島探訪2~落語と音楽と他いろいろ~

 渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホール

 

チン中村村井守トーク

柳家緑太『からぬけ』(落語&ラップ)

玉川太福伊丹明
男はつらいよ第23作「翔んでる寅次郎」』

~仲入り~

阿部海太郎&中村明珍「演奏(コラボ)」

立川談笑『猫と金魚』

 

 

中村明珍さんは元銀杏BOYZのギタリストで、現在は僧侶
周防大島町在住。周防大島探訪と銘打つからにはそこが
メインテーマなのだろうな、と漠然とした薄い予備知識で、
玉川太福さんが出演されると知り伺った。

渋谷伝承ホールは半年ぶりぐらいだ。
行ったことがある人は分かると思うが、伝承ホールに行く
場合、エスカレーターを使うと途中から階段になる。

私はいつもエレベーターではなくエスカレーターで行く
ので、階段を登ると終点に若い男性が座っている。
おやおや。そこは通り道で座るところではないぞ。
よく見ると、その男性は二度見するほどの美形で長身。
いわゆる”ダブル”でビョルン・アンドレセンに似ている。

開場時間が遅れており、外見はええとこのマダムっぽい
がにぎやかしい女性のグループが目立っている。
開場すると、あのビョルン君(勝手に命名)が入ってきた。
と、マダムグループのひとりが気がつき、
「あ、だいちゃん来た来た」と近付いていく。って。
よりによってだいちゃん!?そしてどういう関係?
頭がクラクラしつつ入場。

 

とにかく何もかもが予測不能。客層は若者多めだが傾向
はバラバラ。
ただ、何かを「観る」会場やホール等で、後方の客の視
界をさえぎるので帽子は脱ぐべき、という暗黙のマナー
は老若男女共通のもので世代は関係ないと思った(若い女
性が毛糸の高い帽子を終始かぶっていた)。

明珍さんがいきなり法螺貝を吹きながら登場。
太福さんのファンにとっては法螺貝といえばもちろん
「デロレン祭文」だ。秘かな笑い。

トークコーナーの村井守さんも元銀杏BOYZのドラマーで、
現在はTV番組他の制作会社でディレクターをされている
とのこと。さらに、中島みゆき(敬称略)の従弟だという。
三島由紀夫の「複雑な彼」を思い出す。表面だけでも面白
い人だ。独特な世界観をかもしだすトーク

緑太さんの高座はとても久し振りに拝聴。いわゆるイケメ
ン落語家さんだが落語ラップを持ちネタとされていること
を初めて知った。着物にサングラスは微妙だが、ラップが
洋の話芸だとすれば和洋折衷芸だろうか。斬新と言うより
懐かしい感じがした。

太福師は当然のごとく明珍さんの法螺貝をいじりつつ、何
をやろうかと考えて、地べたの二人の「愛しのロウリュ」
をやろうと思っていたが、男はつらいよの主題歌を作曲し
星野哲郎氏が周防大島町出身だと知り寅さんに、と…
この客層にどうウケるか?の方が気になってしまった。
勝手な推測だが、どちらかと言えば地べたの二人の方がウ
ケたのではないだろうか?久し振りにテーブル掛けのアウ
フグースを観たかった気もする。
明師匠の笑顔が太福師の「かおり」を引き立てていた。
太福師の浪曲を生でずっと観たくてたまらなかったという
明珍さんはどう思われたのだろうか。

楽家阿部海太郎さんは恥ずかしながら存じ上げなかっ
たが、静謐なピアノの音に明珍さんが僧侶の面目として木
魚や鈴(りん)?を挟み込みつつ、ギターをかき鳴らし始める
と、フリップ&イーノばりのコラボレーション音楽となり、
脳がトランス状態寸前になった。

そしてトリは談笑師。談笑師の生高座もとても久し振りだっ
たが、やはり立川流の『猫と金魚』は一味も二味も違う。

総じてカオスな異世界にトリップしたかのような不思議な
会でとても面白く刺激的な一夜を過ごした。