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感想ブログ~演芸(落語・浪曲・講談)etc.~

第五十回 玉川太福”月例”木馬亭独演会

2022年4月1日(金)

 

「第五十回 玉川太福”月例”木馬亭独演会」

 @浅草木馬亭

 

玉川太福「デロレンご挨拶」

東家三可子・玉川みね子
『江藤新吉と芸者お鯉』

玉川太福・玉川 鈴

『サカナ手本忠臣蔵「サンゴの廊下」』

三遊亭萬橘『マイク タイソン物語』

~仲入り~

太福・みね子

『祐天吉松 飛鳥山

 

 

 

記念すべき第五十回。ゲストは満を持して萬橘師匠。
まずはひとりフェスティバルで使用した法螺貝を有
効活用、なデロレンご挨拶。エイプリル・フール
かけたのだろうか(ホラ吹きだけに)。

 

最近色々な浪曲会で前読みをされている三可子さん。
透き通るような外見とお声にはそぐわないネタばか
り聴いている気がする。しかし啖呵はけっこう鋭い。
今席は琴路師匠リスペクトのネタ。
斬首後晒し首の写真を土産物として売られてしまっ
た幕末明治の政治家江藤新平が主人公の恋情もの。


『サカナ手本忠臣蔵 「サンゴの廊下」』。
演題から何故か”刃傷”がなくなった。
このネタに関しては前の記事でも書いたが、演者
及びネタが成長発展するのと同様、聴いている客
も回を重ねて聴けば当然成長発展する。
当初うまく受け入れられなかったとしても聴いて
いるうちにその”ノリ”がつかめて楽しめるように
なる。

聴く前から受け入れ態勢万全で問答無用の全肯定
は、グルメリポートに喩えれば口に入れる前から
美味しいと言っているに等しい。
当初戸惑い気味だったからと言って、「お前みた
いな野暮天には分からないだろうよ歌舞伎も知ら
ないんだろ?」と切り捨てられるのは大変残念だ。
それが同じ客である場合以ての外で、立場をはき
違えているとしか言いようがない。

これは「男はつらいよ」の浪曲化にも言えること
だ。当初はあまり馴染みがなくうまく乗れなかっ
たとしても、映画を観て面白さが分かり、浪曲
する偉業に気づかされる客も少なからずいるはず
で、自分もその一人だ。それ故楽しみにする気持
ちに偽りもおもねりも一切ない。
人は死ぬまで成長する、と水木しげる先生も仰っ
ておられる。

 

閑話休題

 

萬橘師。どこか挙動が怪し気。上手側固定で話し
ているように見えたのは気のせいか?
そしてまさかの落語ではないネオ落語?の『マイ
ク タイソン物語』。大入りの客全員の期待を豪快
にかっ飛ばす破壊神降臨だ。ある意味爽快。

呆気に取られて、仲入り中に買おうと思っていた
サトリデザインさん製太福グッズ限定5点セット
を買うのを忘れ、あっという間に完売(涙)。
萬橘師のせいにすることで(ひどい)自分をなだめ、
3点グッズを購入。

 

 

『祐天吉松 飛鳥山』。
花見の季節にふさわしいネタなので直近で何度か
聴いている。
福太郎師匠は別題『人情花吹雪』という一曲とし
て口演されていたようだ。その題で二代目虎造先
生の音源もある。
かわらけが「素焼きの陶器」なのは小菅一夫の脚
本がそうなっているからだ。
七松が「お願いだからチャンと言って」と泣く場
面で微笑ましい的笑いが起こっていたが、私は少
し涙腺が緩んだ。

 

そして太福さんは令和三年度花形演芸大賞・銀賞
を受賞された。
おめでとうございます。