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感想ブログ~演芸(落語・浪曲・講談)etc.~

三扇会(第24回)

2022年3月11日(金)

 

「三扇会」(第24回)

 @らくごカフェ

 

 

玉川太福・玉川みね子
『祐天吉松「飛鳥山」』

一龍齋貞寿『お富与三郎「玄冶店」』

林家たけ平『百年目』

 

 

今回のテーマは「華」。
それぞれ「飛鳥山の花見」「悪の華」「向島の花見」
を念頭に置いてネタ選びをされたようだ。

 

飛鳥山」は長講『祐天吉松』のなかの一節で、
「人情花吹雪」(作・小菅一夫)という独立した一
曲にもなっており、二代目広沢虎造、福太郎師匠
の音源がある。美しい詞の外題付けがとても好きだ。
この外題付けのなかにも「日陰に咲いた”悪の華”」と
いう詞がある。

太福師匠の声がとてもよく響いていた。
みね子師匠とのコンビネーションも抜群で、
聴いていて至極心地よかった。

当時飛鳥山の花見時期には「かわらけ投げ」遊びの
風習があり、吉松の息子七松がかわらけを売ってい
る設定だが、地語りの説明で「素焼きの陶器」とい
うのについ引っかかってしまう。

陶器も土器も同じく土から作られており焼成温度の
違いで間違いではないが、学術的分類から言えば土
器だ。かわらけは漢字で「土器」と書く。
素焼きの陶器の土器、って何?となってしまう。
かわらけは当時在地(江戸)で使い捨ての大量生産品
として作られており、研究者も多い奥が深い物だ。
陶器となればそれなりの火力の窯を必要とする、
さらに大量となると…などと考えるのは野暮かもし
れないが、イメージをすくわれる気がしてしまう。
そんなことを思うのは私だけだろう。すみません。


貞寿先生の『お富与三郎』は、お富さん♪の歌にも
なっている有名な場面が出てくる「玄冶店」。
機会があれば是非連続で拝聴したいと思った。


たけ平師匠『百年目』。言わずと知れた船場商家
が舞台の大ネタ。非常に濃い内容で、客席全体の
集中力の深度がすごかった。そのため、終演後客
席から複数の感嘆の吐息がもれるのが聞こえた。


三扇会、という演芸会の形式がいつからあるのか
不明だが、演者さんの所属元が違うため、普段寄
席にもない顔付けの番組を聴けるのは得難い機会
である。
私は主に太福師匠が目当てなのだが、柳亭市弥さ
んとの二人会でも思うことだが、他協会のあまり
高座に接する機会がない演者さんを聴くことがで
き、改めてその力量に接してうれしい驚きを覚え
る。

この御三方の三扇会は今席が24回目で、太福師匠
のブログの過去記事を参照すると2013年頃が発端
のようなので、来年10年目を迎える。けっこう積
み重なった時間がある会なのだな、と思わせられ
た。