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今年最後の立川志らく独演会(第8回)

2018年12月23日
「今年最後の立川志らく独演会」(第8回)
 @よみうりホール




立川志ら鈴『俵星玄蕃
立川志らく井戸の茶碗
~仲入り~
     『紺屋高尾』



師匠談志から引き継いだ暮のよみうりホール独演会。
第8回目。皆勤である。

この日は浪曲協会の忘年会という、実に愉しげな会
木馬亭で行われていたのだが、先に志らく師のチ
ケットを買ってしまっていたので、諦めざるを得な
かった。何しろ去年まで皆勤なので。
演目はネタ出しされていたので、イヤな予感がした
のは確かだ。

という所へもってきて、開演後いきなりの、よりに
よって『俵星玄蕃』。歌謡浪曲ではないですか。
何でも志らく師一門における、二ツ目昇進の必須科
目なのだそうだ。

それをこのよみうりホールで行うとは。失笑が起こる。
私は呆れて項垂れた。その空気の中、9分間やり切る。
度胸だけは二ツ目に値するかも。
申し訳ないが、拍手はしなかった。
これでも一応クリアしたことになるらしい。
まあ、落語じゃないので、とりあえず形だけできれば
いいようだ。

そして肝心の志らく師だが、
何故この二つの演目を選んだのかは分からないが、
何の衒いも変化もない、良くも悪くも「普通の」高座
だった。

井戸の茶碗』はそれ以上でも以下でもなく、
どちらかと言えば滑稽味が勝っている志らく師の
『紺屋高尾』はそのまんまだし(「九はん、元気?」
の何が良いのか、以前から私には皆目分からない)。

いつもいただく番組表の中のお言葉で、

「私が1番気にするのは昔から追いかけて
 くれている客だ。彼らがそっぽを向いた
 らテレビに出演した事がマイナスになっ
 ていると言うことになる。彼らが唸る芸
 をやって初めてプラスだと胸を張れる。」


と仰っているが、果たして2018年の集大成である、
この会の出来を「彼ら」はどう判断した、と志らく
はお考えなのか?

確かに、9月の三鷹での『黄金餅』は素晴らしかった。
しかし、この会の出来がそれより素晴らしい、と自認
しているのであれば、それは誤認であると言わざるを
得ない。あくまでも極個人的見解ではあるが。

SNSを眺めても、称賛しか見当たるはずもない。
自分が悪人視されても、バカ正直な感想を書く人間
など存在しないのだ。

ベタな裸の王様になっている様子の志らく師が、
残念でならない。

とは言え、平成30年度の文化庁芸術祭優秀賞を
受賞されたというのだから、腐す方が馬鹿で感性
が鈍っている、ということになるのだろう。

しかし、自分自身に何度問い直しても、
これだったらまだ見番の雲助師独演会
(白酒師もご出演というからほぼ親子会)
に伺った方が良かった、としか思えない
のであった。