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感想ブログ~演芸(落語・浪曲・講談)etc.~

立川志らく独演会@三鷹2018年9月

2018年9月29日
立川志らく独演会 夜の部
 三鷹市芸術文化センター星のホール



立川らくぼ『唖の釣り』
立川志らく『替り目』
     『幇間腹
~仲入り~
     『黄金餅




昨年末以来の志らく師。
主にTVメディア-バラエティ番組-に露出
しまくった結果、大変ご多忙になってしまわ
れた。それ故、次回から夜の部はなくなると
のこと。

昼だけでは恐らくチケットは即完売になって
しまうであろうし、時間的にも余裕がないの
で、残念ながら、行く機会がなくなるかもし
れない。

つまり、三鷹志らく師独演会に伺うのは、
今回が最後かもしれない、ということになる。

Mモト氏の開演前の諸注意アナウンスは、恐
らくこちらが慣れてしまったのだろう、聞き
流すようになってしまった。勿論携帯(スマホ)
の電源は落としているし、コンビニ袋をカサ
カサ…とさせたりなどはしない。

『替り目』。
どうしても談春師と比べてしまう。
志らく師は、やはりテンポを重視しているのか、
良くも悪くも軽快である。

幇間腹』。
こちらもスピード重視。
二席の予定だったのを、夜の部が最後というこ
とで、三席にして頂いたからだろうか。
早過ぎて鍼が痛そうに見えない(笑)。

黄金餅』。
マクラほとんどなしで「下谷の山崎町に...」と始
まった瞬間、「!黄金餅や!」と何故か心の中で
関西弁で叫んでしまった。ものすごく久し振りで
はなかろうか?

死んでも他人に金を渡したくない、我利我利亡者
の願人坊主、西念。

銭をあんころ餅にねじ込んで、喰らい呑み込む場
面。目を背けたくなるほどに凄まじい。

更に焼場で生焼けの遺体から、熱さに耐えながら
銭を取り出す場面。
TV画面内の、やや演出過剰めいて見える「優し
いパパ」とは乖離も甚だしい。

そして、不可視な何かと闘っているようにも見えた。
後で志らく師御本人がTwitterでツイートしていた内
容(自分の中から談志が消えれば、これが本当の十八
番になる)から想像すると、或いは談志の幻影と闘っ
ていたのかもしれない。

例の長い地語りの場面、「下谷の山崎町を出まして、
上野の山下ぃ出まして…木蓮寺ぃ来た時には、皆ずい
ぶんくたびれた、(あたしもくたびれた)」、終わった
瞬間一部で拍手が起こり、私も思わず小さくthumbs
upしてしまった。


余談だが、金に執着しつつ死ぬ西念という願人坊主は、
「藁人形」というこちらもまたあまり愉快ではない落
語にも登場するが、西念の名は、四谷・鮫ヶ橋谷町(現・
新宿区若葉二丁目)の西念寺を由来とするものら
しい。


西念寺伊賀忍者初代服部半蔵正成の菩提寺で、私は
偶然だがこの寺の近くの場所に仕事上の所用があって、
先々月くらいから数回訪れている(玉川太福さんの新作
浪曲「地べたの二人シリーズの登場人物、齋藤さんと
金井君のような格好で)。
前町名に「谷」が付くだけあって、かなりの坂がある。

三鷹志らく師の独演会に行く機会がなくなる、という
のは、非常に寂しいことだが、致し方ない。
あとは頑張って昼の部に行くしか術がない。