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玉川太福の浪曲入門  その11

2017年11月26日
玉川太福浪曲入門 その11
     ダイフクスペシャル」

 @ミュージックテイト西新宿店



玉川太福/沢村美舟
『地べたの二人 十年』
太福・美舟・中川原屋氏「トーク
~仲入り~
玉川太福/沢村美舟
国定忠治 山形屋乗り込み』

 


ミュージックテイト西新宿店における、「浪曲入門」。
記念すべき一周年でその11。私は「その9」から伺っ
ており、3回目である。



トーク」のコーナーで、初回からのゲストをポス
ター等と共に振り返った際、初回と4回目のゲスト
だった東家孝太郎さんが、ホーミー(フーミー)と口
琴の実演をした、と知り、やはり浪曲とホーミーに
は共通性があるのだ、ということを得心した。



往時のスター浪曲師、桃中軒雲右衛門の音源を聴い
た際、その「唸り」振りが、「ホーミー」を彷彿と
させたからで、要するに「倍音」というものなのだ
が、この「倍音」の定義がとても難解で、頭(理屈)
で理解しようとしてもいまいち納得出来ない。



浪曲師はそういう理屈などは関係なく、感覚として
それを会得し、演じている。当然だがそれが「才能」
というもので、凡人と一線を画す部分なのだろう。



太福さん自作の新作「地べたの二人」シリーズは、
古典大衆芸能としての浪曲の因習的な硬直した部分
に新風を吹き込むもので、実に面白い。


国定忠治 山形屋乗り込み』は、らくごカフェで
一度拝聴したが、私はやはり所謂「古典」をもっと
拝聴したい。太福さんはマクラの時などは柔和な表
情だが、啖呵を切るときに、短刀の切っ先のような
鋭い眼をされる時があり、それが素晴らしく格好良
く、陶然としてしまう。
そして紋付袴があれほど似合うひとも珍しい。


最年少曲師の美舟さん、「Siri」が何かを知らなかっ
た、ということも含め相変わらずの可愛らしさだが、
成熟していくにつれて、一体どんな女性になってい
くのかと、死ぬほど余計な御世話だが、末恐ろしさ
を感じてしまう。


しかしながら。
お江戸日本橋亭に足を踏み入れた時点で我ながら
「終わった」と自覚したが(何がだ!)、らくごカフェ、
ミュージックテイト、浅草木馬亭、とどんどん深みに
はまっていく自分を哀愁と共に見つめるもうひとりの
自分は諦念の微笑を浮かべるのみである。
それでいいのだ。